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MicrosoftのCopilot、仕事別に組み直して日次利用率60%超へ

62,000人への標準的な配布では日次利用率が5.1%まで低下。Microsoftは仕事別の利用場面と業務全体を組み直し、AIを成果につなげた。

会議室で4人が壁面の図とホワイトボードを見ながら仕事の流れを検討している

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Vitaly Gariev on Pexels

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全社員へAIを配り、説明会も開いた。それでも数週間後には、一部の人しか使わなくなる。そんなとき、便利な機能を紹介する研修を増やせば定着するのだろうか。

Microsoftも同じ壁にぶつかった。62,000人の販売組織へCopilotを広げたところ、日次利用率は初期の22.7%から約1か月で5.1%まで落ちた。その後、製品の使い方ではなく、仕事のどの場面で使うかを組み直し、2年以内に60%超へ引き上げた(Microsoft MCAPS case study)。

答えは、利用を促すことから始めないことだった。まず成果を一つ決め、今の仕事を見える形にし、人とAIの担当を置き直す。販売組織で何を変えたのか、その考え方が部署をまたぐ仕事にも通用するのかを順に見ていく。

配布と研修で止まった理由

MicrosoftほどAIに詳しい会社でも、なぜ標準的な導入では定着しなかったのか。最初に採った方法は、ツールを配布し、研修を行い、あとは社員に使い方を見つけてもらうというものだった。普段のソフトウェアなら通用してきた進め方だが、Copilotの日次利用率は急落した(Microsoft MCAPS case study)。

0204060初期ピーク: 22.7%約1か月後: 5.1%組み直し後: 60%超22.7%5.1%60%超初期ピーク約1か月後組み直し後%

この変化は、AIへ触る機会を増やすだけでは習慣にならないことを示す。対象はMicrosoft Customer and Partner Solutionsの62,000人だ。2023年から2025年まで追ったケース資料と、研究者による解説で数値を確認できる(HBR Cold Call)。

資料によると、販売担当者には1日平均275回の中断があった。そこへ「AIをもっと使おう」という新しい課題を足しても、どの仕事と置き換わるかが分からなければ、慣れた手順へ戻るほうが早い。では、60%超へ戻すとき、何を日常の中へ置いたのだろうか。

仕事の場面へ埋め込んだ

利用率を戻したとき、Microsoftは研修の量ではなく、販売担当者の一日をどう変えたのか。取り組みは4段階に整理されている(Microsoft MCAPS case study)。

  1. AIで何ができるかを共通理解にする
  2. 現場で信頼されている人を推進役にする
  3. 職種ごとの実際の仕事で使い方を試す
  4. 毎日の働き方へ入るまで繰り返す

大きかったのは3段階目だ。「営業でAIを使う」という広い目標を、顧客向け資料の準備、会議の要約、案件情報の更新、見込み案件の優先順位づけまで分けた。新しい使い方は、先行グループの満足度が70%へ達してから、すぐ使える指示例として全体へ広げた(同ケース資料)。

さらに、少人数の週次ミーティングで同じ職種の使い方を見せ合った。月に一度使う人、週に一度使う人、毎日使う人を分けて追い、説明会への参加ではなく、仕事の習慣になったかを測った。

自分はここで、AIの導入施策というより、仕事の手順書を作り直す話だと感じた。ツール名から始めず、「顧客との会話を増やすには、今日のどの作業を変えるか」まで下ろしたことで、社員は試す場所を自分で探さずに済む。この方法で個人の仕事は変えられる。では、複数の部署を通る仕事も同じように速くなるのだろうか。

一工程より全体を組み直す

個人がAIで一工程を速くしても、なぜ業務全体の所要時間は縮まらないことがあるのか。次の担当者が同じ量しか処理できなければ、速くなった分は待ち行列に変わる。Microsoftのプレイブックも、壊れたプロセスへAIを足すと次工程の列が長くなると説明する(Microsoft Frontier Playbook 18ページ)。

AIの前に仕事を減らす

Microsoftのクラウド供給網では、需要の変化を調べて説明するまで5〜7日かかり、選定した月次計画業務は平均約10営業日を要していた。そこでチームは、すぐにエージェントを配置しなかった。最初に部署をまたぐ流れを描き、不要な引き継ぎや重複作業を減らし、全員が同じ事実を見る共通のデータ基盤を作った(Microsoft公式ブログ)。

自分が一番意外だったのは、AIを増やす前に、仕事そのものを減らしている点だ。資料はこの順番を「lean before agents」と呼ぶ。判断の重さに応じて、人が担う場所、AIが処理して人へ戻す場所、将来は自動化できる場所を分けている(Microsoft Frontier Playbook 18〜19ページ)。

111の担当を同じ土台へ置く

その土台ができてから、計画、調達、履行、物流へ111の専用エージェントを置いた。エージェントは需要変化を調べ、輸送手段を費用、時間、二酸化炭素への影響で比較する。定めた権限の範囲では、発注の更新や取消も支援する(Microsoft公式ブログ)。

2025年9月から2026年8月まで150人超の横断チームが進めた社内分析では、5回の月次計画で平均約10営業日から2.5営業日未満へ短縮した。月20件超の需要変更調査も5〜7日から数時間になり、一部は20分未満だった(同ブログの注2)。

AIの効果を決めたのは、一つの作業速度より、仕事が最後まで流れる設計だった。個人の利用率から始めた話が、ここで部署間のデータと判断権限へつながる。次に必要なのは、この社内結果をそのまま目標値にせず、自社で何を測るかを決めることだ。

成果から測る数字を決める

Microsoftの数字を、自社の導入目標へどう読み替えればよいのか。まず、60%超の日次利用率、売上、成約率、供給網の短縮を同じ種類の成果として扱わないことが大切だ。

販売の社内比較では、2024年1月から6月までの687人について、優先する利用場面の採用が3倍、担当者あたり売上が9.4%増え、成約率が20%高かった。これはMicrosoft内の通常利用群と低利用群を比べた結果だ。他社でも20%上がると示す検証ではない(Microsoft公式ブログの注1・4)。

Harvard Business Schoolの研究者も、Microsoftの事例では技術より、人と組織と行動が課題だったと説明する(HBR Cold Call)。HBSはこの導入を2026年1月のケースとして公開し、その後も改訂している(HBS Working Knowledge)。

導入数は入口の数字、日次利用率は習慣の数字、所要時間や成約率は仕事の成果を示す数字になる。最初から全部を追うより、一つの業務成果を決め、それを動かす利用場面を測るほうが、利用と価値の関係を確かめやすい。では、最初の一部署で何から着手すればよいのだろうか。

小さな業務で始める順番

Microsoftは100件超の社内事例を、3つの型へ整理した。職種の仕事を速める型、既存業務を組み直す型、AIを前提に新しい仕事を作る型だ(Microsoft Frontier Playbook 14〜20ページ)。初めて取り組むチームなら、既存の一業務を次の順で見ると、同じ考え方を小さく試せる。

  1. 「AIを使う」ではなく、短くしたい時間や増やしたい顧客対応など、成果を一つ決める
  2. その成果までに誰が何を受け取り、判断し、次へ渡すかを端から端まで書く
  3. 不要な確認や二重入力を先に減らし、担当者が同じデータを見る場所を決める
  4. 人が判断する工程と、AIが処理して人へ戻す工程を分ける
  5. 利用回数だけでなく、所要時間、品質、顧客対応など最初に決めた成果を測る

この順番なら、AIが使われない原因と、使われても成果が出ない原因を分けて調べられる。前者なら仕事別の場面と習慣を見直し、後者なら業務の流れと測る成果を見直せる。

まとめ

Microsoftの62,000人の販売組織では、Copilotを配布して研修する標準的な方法だけでは、日次利用率が22.7%から5.1%へ落ちた。職種ごとの具体的な仕事へ使い方を埋め込み、同僚から学ぶ習慣を作った後は、60%超へ上がった。

部署をまたぐ供給網では、さらに一歩進めている。仕事の流れを簡素化し、共通のデータ基盤を作り、人とAIの担当を分けてから111のエージェントを置いた。選定した月次計画業務は、平均約10営業日から2.5営業日未満へ短くなった。

AI導入で最初に決めるのは、ライセンス数や研修回数ではない。変えたい業務成果を一つ選び、そこまでの仕事を見える形にする。その順番が、AIを配った状態から、仕事を変えられる状態への橋になる。

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