AIエージェントにビルドや調査を任せている最中に、ノートPCを閉じて外出したくなったことはないだろうか。これまでのターミナルは、ウィンドウを閉じた瞬間にその作業も終わっていた。Microsoftが開発するターミナルアプリ「Intelligent Terminal」のv0.3では、ここが変わった。ウィンドウを閉じても、裏でエージェントの作業を続けさせられる「ヘッドレスモード」が加わっている(Microsoft公式開発者ブログ)。
Intelligent Terminalは、標準のターミナルにAIコーディングエージェントを統合した実験的なアプリだ。GitHub Copilot CLIやClaude、Codexなどのエージェントを、そのまま呼び出して使える。2026年11月4日に公開されたv0.3は、公式ブログが「公開以来、最大のアップデート」と位置づける更新になった(同ブログ)。何がどこまでできるようになったのかを、公式発表とGitHubのリリースノートから確かめる。
ヘッドレスモードは何をしてくれるのか
公式ブログは、これまでの課題をこう説明している。「長いエージェントのタスクや長いビルドは、ターミナルを閉じた瞬間に死んでいた」。ヘッドレスモードは、それを裏で継続させる機能だ(同ブログ)。
使い方はシンプルだ。動かしたいタブを右クリックして「Turn on headless mode」を選ぶと、そのタブのシェルとエージェントペインがバックグラウンドで動き続けるようになる。ウィンドウを閉じても、ヘッドレス化したタブはサイドバーと、アクティブなウィンドウがないときはシステムトレイに表示され続ける。終了したエージェントのセッションは「最近のエージェントセッション」の一覧に残り、そこから再開もできる(GitHub公式リリースノート)。
ここまでなら、「閉じても大丈夫になった」という話で終わる。だが、30分かかるビルドを任せて外出するような場面では、もう一歩先が気になる。ノートPCを閉じたり、PCを再起動したりしても、このヘッドレスモードは持ちこたえてくれるのだろうか。
ヘッドレスモードはどこまで続くか
自分は最初、公式ブログの「バックグラウンドで続く」という説明を読んで、PCを閉じてもどこかで動き続けるものだと思っていた。だが答えはそう単純ではなかった。GitHub公式リリースノートの「既知の問題」節には、別の説明がある。ヘッドレスモードは「プロセスをメモリ上に保持しているだけで、アプリの終了や再起動をまたいで維持されるわけではない」という(同リリースノート)。
つまり、続くのは「ターミナルのウィンドウを閉じる」までになる。Intelligent Terminalのアプリ自体を終了させたり、PCをシャットダウン・再起動したりすると、裏で動いていたエージェントの作業もそこで止まる。公式ブログの文面だけでは分からなかった、アプリのプロセスが生きている間だけという条件が、リリースノートで初めて見えた。
ここが分かると、使い方の線引きもはっきりする。ノートPCを閉じずに別の作業へ移る、ウィンドウだけ閉じて他のアプリを開く、といった使い方なら作業は継続する。一方で、PCをシャットダウンして持ち運ぶ、Windows Updateで再起動がかかる、といった場面では、裏で動いていたエージェントのセッションごと失われる。長時間のタスクをヘッドレスモードに任せるときは、その間だけはPCを起こしたままにしておく必要がある。長く動かすタスクほど、同時に開くタブも増えていく。増えたタブの中で、どれが今も動いているかはどう見分ければいいのだろうか。
タブはサイドバーでどう見分けるか
もう一つの変更が、タブの並べ方だ。v0.3では、タブを縦に並べるサイドバーが既定で有効になった。これまでの横並びタブと違い、各タブの下にはエージェントの状態・作業ディレクトリ・Gitのブランチ情報などを最大2つまで表示できる。エージェントCLIが動いているタブはアイコンがエージェント用に変わり、入力待ちのタブには通知ドットが付く(同ブログ)。
サイドバーには次の機能も加わった。
- 開いているタブと、他のウィンドウで動いている最近のエージェントセッションを横断して検索できる
- 「Agents only」フィルターで、エージェントCLIを実行中のタブだけに絞り込める
- タブを右クリックしてサイドバー上部にピン留めできる
Ctrl+Shift+Sでサイドバーの開閉を切り替えられる。横並びタブに戻したい場合は設定の「Appearance」から変更できる(同リリースノート)
タブが増えるほど、どれが動いていてどれが止まっているかを目で追うのは難しくなる。縦型サイドバーとフィルター・検索は、その「今どれが動いているか」を一覧で把握するための変更だ。ここまでの機能は、普段使っているエージェントCLIでもそのまま使えるのだろうか。
自分の環境で今すぐ使えるか
対応するエージェントCLIは、GitHubの公式リリースノートに一覧がある。
| エージェントCLI | 対応状況 |
|---|---|
| GitHub Copilot CLI | 既定のエージェントとして統合 |
| Claude | Agent Paneに対応 |
| Codex | Agent Paneに対応 |
| Gemini | Agent Paneに対応 |
| OpenCode | V1・V2の両方に対応。バージョンに応じたアダプターが自動で選ばれる |
| Google Antigravity | Agent Paneへの統合と、ネイティブCLIの両方に対応。ブラウザでのサインインにも対応 |
(いずれもGitHub公式リリースノートより)
インストール済みのエージェントCLIは自動検出され、新しいタブのメニューからプロファイルとして直接起動できる。ただし、WSL(Windows Subsystem for Linux)にインストールしたエージェントCLIは、この自動検出の対象に入らない。WSL上でClaude CodeやCodexを使っている場合は、ネイティブのプロファイルとして自動では現れない。その場合は手動でプロファイルを作る(同リリースノート)。
入手方法は、Microsoft StoreまたはGitHubのリリースページだ。現時点では「experimental stage(実験的段階)」と公式に位置づけられている(同ブログ)。既存のWindows Terminalとは別アプリとして動くため、置き換えではなく追加で試す形になる。
まとめ
Intelligent Terminal v0.3は、AIエージェントをターミナルで使う上での2つの困りごとに手を入れた。1つは、ウィンドウを閉じるとエージェントの作業が止まる問題で、ヘッドレスモードによりウィンドウを閉じても作業を継続できるようになった。ただし続くのはアプリのプロセスが生きている間だけで、アプリの終了やPCの再起動をまたいでは維持されない。もう1つは、タブが増えると状況を把握しづらい問題で、縦型サイドバーと検索・フィルターにより、動いているエージェントを一覧で追えるようになった。
対応エージェントCLIはGitHub Copilot CLI、Claude、Codex、Gemini、OpenCode、Google Antigravityと幅広い。WSLでエージェントCLIを使っている場合だけ、自動検出に頼らず手動でプロファイルを作る必要がある点を覚えておくとよい。
現時点では実験的なアプリで、画面の作り込みも発展の途中にある。それでも、「ウィンドウを閉じたら作業が止まる」というターミナルの制約は、使う人なら誰もが一度はぶつかってきたものだ。そこにMicrosoft自身が公式に手を入れてきたことは、覚えておく価値がある。
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