ノイズキャンセリング付きのヘッドホンを比較していると、価格が上がるほど仕様の数字が増えていくのに、結局どこにお金を払っているのかが分かりにくくなる。値段が上がっても、音を鳴らしている部品そのものは変わらないことが多いからだ。
Nothingが2026年9月に発表した新型ヘッドホン「Headphone (1) Pro」は、その部品を1つから3つに増やした。何がどう変わったのか、そしていくらで手に入るのか。
普通のヘッドホンは振動板が1つ
ヘッドホンが音を出す部品は、内部の振動板だ。英語ではドライバーと呼ぶ。多くのオーバーイヤー型ヘッドホンは、片耳につき1つの振動板で、低い音から高い音まですべてをまかなっている。1つの部品に、低音を出す振幅の大きさと、高音への反応の速さという別々の得意分野を両方担わせる形になる。
価格帯が上がると、この振動板のサイズが大きくなったり、素材が変わったりはする。ただし「1つの振動板がすべての音域を鳴らす」という基本構造そのものは、上位機種でも変わらないことが多い。では、Headphone (1) Proは何を変えたのか。
3種類の振動板が帯域を分担する
Nothing公式の製品ページは「3つのドライバーで、より多くの音の情報を聴き取れる」とうたう。内部には、低音を受け持つ「40mmダイナミックドライバー」と、ボーカルなど中高音を受け持つ「プレシジョンダイナミックドライバー」がある。これに加えて、高音だけを受け持つ「xMEMSドライバー」という、方式の異なる3つ目の振動板を積んでいる。
xMEMSは、一般的なダイナミックドライバーのようにコイルと磁石で膜を動かす方式ではなく、半導体の技術で振動を作る新しい駆動方式だ。可動部品が少なく、高音域の応答性を専門に担う部品として使われる。
| 名称 | 方式 | 担当する音域 |
|---|---|---|
| 40mmダイナミックドライバー | 一般的な磁石とコイルの駆動方式 | 低音 |
| プレシジョンダイナミックドライバー | 同上(専用チューニング) | ボーカルなど中高音 |
| xMEMSドライバー | 半導体による駆動方式 | 高音 |
つまりHeadphone (1) Proは、1つの振動板に低音から高音までを無理に担わせず、帯域ごとに専用の振動板を割り当てている。
低音用の40mmダイナミックドライバーは、旧モデルの「Headphone (1)」と比べて低音の衝撃感が15%、感度が26%向上するという。ただしこの数値は公式ページの脚注で「Nothingの研究所が特定条件下で実施したテストにもとづく理論上の相対値」と明記されている。独立した第三者による検証値ではなく、メーカー自身の実験室データにもとづく数字だ。
自分はこれまで、ノイズキャンセリング付きヘッドホンの価格差は主に遮音の強さや素材の違いだと思っていた。振動板そのものを3種類に分けた製品を見て、「なぜ1つでは足りないのか」というところから調べ直すことになった。
遮音性能の数値も条件つきで読む
ノイズキャンセリング機能も強化されている。Nothingは最大46dBの遮音性能をうたい、10個のマイクと新しいシリコン製の音漏れ防止シールを使う。ただし公式ページの脚注は「46dBは理論上の最大値」と明記している。Nothingの研究所が特定条件下で測定した数値で、実際に得られる遮音量は環境によって異なるという。低音向上率と同じく、実験室条件での数値だと理解したうえで、他機種と比べる材料にしたい。
素材・装着感・接続機能も底上げされた
振動板とノイズキャンセリング以外の変更点は次のとおり。
- ハウジングはアルミニウムの塊からの削り出し、アームには新開発のチタン合金を採用し、Headphone (1)比で45%軽量化した。自分は他媒体の紹介記事を先に読んだとき、45%軽くなったのは削り出しアルミのアームだと早合点しかけた。公式ページを読み直すと、削り出しアルミはハウジング、45%軽量化はチタン合金のアームという別々の説明だった
- 透明パーツには傷・破損に強い9H硬度の「Panda Glass」を使う
- 二層構造のイヤークッションはHeadphone (1)比で50%柔らかくなり、メガネをかけたままでも追従しやすくなった。ヘッドバンドは10%幅広、パッドの厚みも12%増した
- IP52の防塵・防水性能に対応する
- Bluetooth 6.1、3.5mmケーブル、USB Type-Cケーブルの3方式で接続でき、USB接続時は最大24-bit/192kHzのロスレス再生ができる
- 連続再生時間はノイズキャンセリングをオフにした状態で最大68時間、5分の充電で4時間再生でき、USB-Cケーブルでの完全充電は120分
- ロンドンのMetropolis Studiosのエンジニアが調整したイコライザープロファイルを使える。本体のFLATスイッチで、色付けのないニュートラルな音に即座に切り替えられる
向く人・向かない人
- 向く人: 1つの振動板でまかなうヘッドホンに物足りなさを感じている人、有線・無線を場面で使い分けたい人。USB-C接続でのハイレゾ再生やメガネと併用する装着感も強化されている
- 向かない人: メーカーの理論値ではなく実測レビューを踏まえて判断したい人。この記事の時点では実機レビューは出ていない
日本の公式サイトでは、価格6万4,800円(税込、White/Black)で2026年9月30日時点でも注文できる。無印の「Headphone (1)」の価格は3万9,800円で、Pro化により価格は約1.6倍になった。注文画面には「出荷は10月上旬より順次」という表示もあり、注文してすぐ手元に届くわけではない。
まとめ
Headphone (1) Proは、低音用の40mmダイナミックドライバー、高音用のxMEMSドライバー、ボーカル用のプレシジョンダイナミックドライバーを積む。この3種類の異なる振動板を1台に組み合わせた点が特徴だ。多くのヘッドホンが1つの振動板で全音域をまかなうのに対し、帯域ごとに専用の部品を割り当てている点が構造上の違いになる。
遮音上限46dBや低音の向上率15%/26%は、いずれもNothingの研究所が特定条件下で測定した理論値であり、独立検証済みの数値ではない。素材はハウジングが削り出しアルミ、軽量化したアームがチタン合金だ。IP52の防塵防水やBluetooth 6.1、USB-Cでの24-bit/192kHzロスレス再生にも対応する。価格は6万4,800円(税込)で、日本の公式サイトから注文できるが、出荷は10月上旬からになる。
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