庭やベランダで電撃ラケットを振っても、蚊はラケットが届く前に逃げる。振り回すだけ振り回して1匹も当たらず、結局何度も刺される。そんな経験がある人は少なくないはずだ。「レーザーで蚊を自動的に撃ち落とす」という装置の話をニュースサイトで見かけて、どうせ大げさな宣伝文句だろうと思った。調べてみると、LiDARとミリ波レーダー、AIによる画像判定、レーザーを組み合わせたセンサー構成の製品が実在した。Photon Matrix Labの公式ストアで予約を受け付けている。見つける・狙う・落とすを、どこまで機械に任せられるのかが気になった。
普通の蚊対策は人まかせ
電撃ラケットは、蚊を見つけて振るところまでを人がやる。蚊取り線香やスプレーは駆除ではなく忌避が中心で、寄ってこさせないことはできても、近くに来た1匹を落とすことはできない。検知だけを自動化した製品もある。イスラエルのBzigo Irisは低出力のレーザーで蚊の居場所を照らし、人間が気づいて叩く仕組みで、価格は299ドルだ(Intelligent Living)。見つける・狙う・落とすのうち、最後の「落とす」はどの製品も人の手に残っていた。
検知から駆除までを機械がやる
Photon Matrixは、この3つをすべて機械だけで完結させる。公式ストアの仕様表によれば、検知範囲は本体から半径6m・水平90度の扇形で、対象は体長2〜20mm、飛行速度がおおむね秒速1m以下の昆虫だ。この範囲の中で、4つの技術が役割を分けて働く。
- LiDAR: 背景までの距離を常に測り続け、距離が変化した場所を「候補」として拾う
- AIビジョン: 候補の形を調べ、蚊らしい大きさ・動き方をしているかを判定する
- ミリ波レーダー: 人やペットのような大きな物体を検知し、安全監視を兼ねる
- ガルボ機構のレーザー: 回転する鏡でビームの向きを変え、蚊の翼を狙って撃つ(Intelligent Living)
候補の特定にかかる時間は約2ミリ秒、検知からレーザー発射までの合計で約3ミリ秒とIntelligent Livingは報じている。最大で毎秒30匹まで対応できるという。正直、最初はこの数字を誇張だと疑った。だが同じ仕様(半径6m・90度・2〜20mm・秒速1m以下)はNew Atlasにも独立して書かれており、1媒体だけが盛った数字ではなさそうだった。
レーダーも要る理由
この扇形の範囲を、LiDARとミリ波レーダーが同時に見張っている。
この図は公式ストアの仕様表にある半径6m・水平90度という数値をそのまま形にしたものだ。本体を頂点にした扇形の中だけが検知範囲で、外側は見張っていない。扇の内側では、LiDARとミリ波レーダーが同時に働く。
LiDARは「何かが動いた」ことには素早く気づけるが、それが蚊なのか、葉っぱなのか、人の指なのかまでは区別が苦手だ。AIビジョンが形を見て蚊らしさを判定するのはそのためだが、判定には時間もかかる。ここでミリ波レーダーが別の役目を持つ。人やペットのように大きな物体を検知すると、AIビジョンの判定を待たずにレーザーを止める安全スイッチとして働く。LiDARだけで完結させず、役割の違うセンサーを重ねているのは、見つける速さと、人に当てない確実さを両方とも落とさないためだと分かる。
向く人・向かない人
向くのは、庭やテラスなど屋外の決まった範囲で繰り返し蚊に悩まされていて、海外メーカーの直販サイトから個人輸入することに抵抗がない人だ。半径6m・90度という指向性のある範囲なので、部屋の形が複雑な屋内や、虫が四方から来る開けた場所には向かない。すぐに日本国内で受け取りたい人や、認証済みの製品だけを選びたい人にも向かない。
気になる点
公式ストアでは屋外向けの青色レーザー版が1,088ドルで予約を受け付けている(定価1,288ドルから15%引き、2026-10-04確認)。屋内向けの赤外線版は988ドル(定価1,188ドルから、Intelligent Living調べ)。送料は無料だが、関税・輸入消費税は購入者負担と明記されている。プラグは中国・EU・米国・英国・豪州の5種類から選ぶ形で、日本向けの表記はない。電源自体は100-240V ACに対応しており、米国タイプのプラグ形状は日本のコンセントに物理的には挿さるが、選択肢に「日本向け」がない点は注文時に戸惑いそうだ。発送は予約から120日以内とされている。
もう1点、青色レーザー版はIEC 60825-1のクラス4(最も出力の強い区分)に相当する内蔵ダイオードを使う。メーカーは、多層の能動的安全保護で完全に密閉していると説明する。一方で、第三者機関による安全認証はまだ公表されておらず、各国の規制申請も完了していないとIntelligent Livingは報じている。密閉とレーダーによる安全監視はメーカーの設計によるもので、外部機関のお墨付きを経た段階ではない。
なお、この製品はもともとクラウドファンディングサイトで648ドルとして公開され、当初の反応は1日あたり約2,000ドル程度だったという。開発者のTikTok動画が一晩で7,000万回以上再生されたことをきっかけに、3,000件を超える注文が入った。累計の調達額は270万ドルを超えている(Gigazine、CGTN)。今の価格は、このクラウドファンディング後の一般予約価格にあたる。
まとめ
Photon Matrixは、LiDAR・AIビジョン・ミリ波レーダー・ガルボレーザーを組み合わせ、検知から駆除までを機械だけで完結させる蚊撃退装置だ。検知範囲は本体から半径6m・水平90度、検知からレーザー発射までの反応は約3ミリ秒、最大で毎秒30匹に対応するという。電撃ラケットや検知だけの製品と違い、人が気づいて振る・叩く作業がいらない点が、普通の蚊対策との違いになる。
価格は屋外向けの青色レーザー版が1,088ドル、屋内向けの赤外線版が988ドルで、Photon Matrix Labの公式ストアから予約できる。発送は予約から120日以内とされ、送料は無料だ。第三者の安全認証やAmazonでの取り扱いはまだなく、関税・輸入消費税は別途かかる点は、注文前に公式ストアの最新情報で確かめておきたい。
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