Litmus — 話題のニュースを、深く読み解く。 RSS
ガジェット

電子ペーパー新技術「Kaleido 4」、動画18fps再生と色域2倍を実現

E Inkの新しいカラー電子ペーパー「Kaleido 4」は、色域を前世代の2倍に広げ、動画再生に初めて具体的な数字(最大18fps)を付けた。パネル性能とメーカー独自技術の見分け方も整理する。

木の床に座った人が白い電子ペーパー端末を手に持ち、文字を表示した画面を読んでいる接写

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Letícia Alvares on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

電子書籍端末や電子ノートの画面は、文字はくっきり読めるのに、色が薄くてページ送りも一呼吸遅い。そう感じたことがある人は多いはずだ。

2026年10月15日(米国時間)、E Inkが新しいカラー電子ペーパーの基盤技術「E Ink Kaleido™ 4」を発表した。色の再現範囲を前世代の2倍に広げながら、動画再生を最大18fpsに対応させたという。E Ink公式発表によると、この性能向上を支えるのは新しい酸化物TFTバックプレーンと新アルゴリズム、フロントライトの再設計だ。

電子ペーパーの新世代で何が変わったか

E Ink公式発表が挙げる数値は次の3つになる。

  • 色域容積: 前世代の2倍(40K超)
  • 白色反射率: 15%向上
  • コントラスト: 50%向上

そのうえで「動画再生は最大18fps(フレーム毎秒)に対応する」と明記されている。世界で最初にこのパネルを搭載する製品は、中国・漢王科技(Hanvon Technology)の電子ノート「M10C II」だ。発売日・価格・対象地域は公式発表に記載がなく、2026年10月19日時点では確認できない。

色域が広がり、白色反射率とコントラストが上がるというのは、言い換えれば「白い紙に近い明るさで、より多くの色を見分けられるようになる」ということだ。カラー漫画や雑誌、資料の図版をカラー電子ノートで読む人にとっては、同じページがこれまでより自然な色合いで表示されることを意味する。

電子ペーパーが動画を苦手としてきた理由

多くの人が電子ペーパー端末を選ぶ理由は、画面を長時間見ても目が疲れにくく、充電の持ちも良いからだ。E Ink公式ページは、同社のComfortGaze™フロントライトを使った画面は、一般的な液晶より網膜細胞へのストレスが3分の1だと説明している。その代わりに、電子ペーパーが苦手としてきたのが動きのある表示だ。電子書籍端末でページをめくると、画面が一瞬黒く反転してから次のページが表示される。あの「ガクッ」とした感覚を知っている人は多いだろう。

マイクロカプセルの中で起きていること

E Ink公式の仕組みの説明ページによると、電子ペーパーの画面は無数の微小なマイクロカプセルでできている。各カプセルの中には透明な液体と、プラス・マイナスに帯電した粒子が入っている。電界をかけると粒子が物理的に動いてカプセルの上面に集まり、その色が見える仕組みだ。液晶や有機ELが電気信号で画素の発光・透過を切り替えるのに対し、電子ペーパーは粒子そのものを液体の中で動かして表示を作る。

同じ公式ページは、電子ペーパーの性質について次のようにも説明している。

  • 全画面の書き換えは最短120ミリ秒で済む
  • 画面を切り替えたあとは、電力をかけなくても表示が保たれる(「双安定」という性質)
  • 高速モードを使えばアニメーション品質の動画レートに対応できるが、現行の量産モジュールは動画レートの更新には対応していない

粒子を物理的に動かして表示を作る仕組み自体が、電子ペーパーが動画に弱い理由だ。乗り越えるには、粒子の動かし方を制御する駆動回路の側を変える必要がある。

駆動回路を変えて速さを手に入れた

Kaleido 4が新しい酸化物TFTバックプレーンを採用したのは、ここに手を入れたからだ。駆動電圧を上げてより速く粒子を動かせるようにし、新アルゴリズムと組み合わせた。その結果、E Ink自身が「量産モジュールは動画レートに対応していない」としてきた制約の先、最大18fpsという具体的な数字まで到達したことになる。

自分で割ってみると、18fpsは1コマあたり約56ミリ秒だ。公式ページが挙げる「全画面書き換えは最短120ミリ秒」より明らかに速い。ページ送りのような全画面の書き換えと、動画再生のときの書き換えは、同じ仕組みではなさそうだと見ている。公式発表はそこまで説明していないが、動画再生では画面の一部だけを粗く塗り替える、ページ送りとは別の高速モードを使っていると考えるのが自然だ。

ただ、「電子ペーパーで動画が見られる」という言葉自体は、今回のKaleido 4発表で初めて使われたわけではない。

Kaleido3でも動画再生は可能だった

2022年4月のKaleido 3発表でも、インクの応答性が向上してアニメーションと動画再生が可能になった、とすでに説明されていた。ただし当時の発表文であわせて紹介されていたのは、13.3インチ版を屋外広告サインとして使う用途で、手元で読む個人向け端末での動画再生ではなかった。

Kaleido 3の発表には、具体的なフレームレートの数字もなかった。今回のKaleido 4発表で初めて「18fps」という数字が示された。「動画再生ができる」という言葉だけが4年間ひとり歩きしていたところに、ようやく具体的な物差しが付いたことになる。

項目Kaleido 3(2022年発表)Kaleido 4(2026年発表)
色域容積前世代比の記載なし(色の鮮やかさは30%向上)前世代比2倍(40K超)
動画再生「可能」とだけ説明、fps記載なし最大18fps
コントラスト記載なし前世代比50%向上

この表からも、Kaleido 4で新しいのは「動画が見られるようになったこと」そのものではなく、「どれくらい滑らかに動くかが、初めて数字で示されたこと」だと分かる。一般的な映像の24〜30fpsにはまだ届かないが、肉眼で動きが滑らかに見え始めるとされる水準には近づいている。いずれの数値もE Ink自身の発表によるもので、第三者機関による独立した測定ではない。

世界初搭載のM10C IIがうたう性能にも、パネルとは別にメーカー自身の工夫が混ざっている。

M10C IIはパネル以外の工夫も積む

E Ink公式発表は、漢王科技のM10C IIが「ページ送り・スクロールを27%高速化した」とも紹介している。

発表文を読むと、27%の高速化は漢王の自社技術によるものだと分かる。自社開発の「Enhanced Pressure Floating」という技術と、同社のタイミングコントローラー「T2000」を、Kaleido 4パネルと組み合わせて実現した数字だ。つまりKaleido 4パネル単体が保証する性能ではなく、搭載するメーカーが自分で駆動回路を作り込んで初めて出てくる数字になる。

ここまでの内容を、パネル世代が保証するものと、漢王がM10C II独自に積んだものとに分けると次のようになる。

  • パネル世代(Kaleido 4)が保証するもの: 色域容積2倍、白色反射率15%向上、コントラスト50%向上、動画最大18fps
  • 漢王がM10C II独自に積んだもの: ページ送り・スクロール27%高速化、無線・バッテリー不要のデジタルペン(8,192段階の筆圧感知)、OCR・音声・AI機能

他のメーカーがKaleido 4を採用した製品を出したとき、上の4項目はそのまま引き継がれる可能性が高い。一方で下のような項目は、メーカーごとの工夫次第で製品ごとに変わると見ておいたほうがいい。

まとめ

E Inkの新しいカラー電子ペーパー「Kaleido 4」は、色域容積を前世代の2倍に広げ、動画再生に初めて具体的な数字(最大18fps)を付けた。「電子ペーパーで動画が見られる」という説明自体は2022年のKaleido 3から存在していたが、今回初めて物差しが付いた形になる。

世界初搭載の漢王M10C IIは発売日・価格が未定だ。同機がうたう「ページ送り27%高速化」も、Kaleido 4パネル単体の性能ではなく、メーカー自身の駆動技術による上乗せだった。今後対応製品が増えたときは、パネル世代が保証する数字と、メーカーが独自に積み増した数字を分けて見ると、スペック表の読み違いを避けられる。

この記事の先を読む本を探す

特定の本を勧めるものではありません。検索結果から、いまの版と目次を確かめて選んでください。

コメント

気づきや感想をどうぞ

記事への補足や、読んで考えたことをお寄せください。個人情報や、他の人を傷つける内容の投稿はお控えください。

コメントを読み込んでいます…

    ほかの記事

    最新の記事 →