ICカードで改札を通るのが当たり前になった今でも、券売機で紙のきっぷを買うことはある。現金しか持っていないとき、他社線からの乗り継ぎで通しのきっぷが要るとき。その紙のきっぷの通し方が、2026年10月1日から変わった路線がある。つくばエクスプレス(TX)だ。磁気のきっぷを改札機に挿入する、あの動作ができなくなった。JR東日本を含む首都圏の鉄道7社も、2026年10月13日、同じ変更を2027年春から始めると発表した。磁気のきっぷはどんな形に変わり、改札の通り方はどう変わるのか。自分がよく使う路線ではいつ始まるのか。
つくばエクスプレスではもう挿入できない
TXを運営する首都圏新都市鉄道は、2026年1月14日にQR乗車券システムの導入を発表した。発表どおり2026年9月30日をもって磁気乗車券は全廃となり、10月1日から自動改札機で磁気のきっぷが使えなくなっている。山手線に乗り入れる私鉄で、普通乗車券を含む磁気乗車券を全廃するのはTXが最初だ。
有効期間内の磁気乗車券は、ごあんないカウンターの係員に提示すれば引き続き使える。他社が発行した磁気式の連絡定期券も、10月1日以降は同じように係員への提示が必要になった。都営大江戸線に乗り換える新御徒町駅の専用改札は、磁気券を扱う必要がなくなったため、すべてIC専用機に置き換わっている。自動改札機だけを見れば、磁気のきっぷはすでに過去のものになっている。では、なぜ今このタイミングで、各社がそろって磁気をやめるのか。
磁気をやめる理由は機構の複雑さ
次の図は、現在の磁気乗車券と新しいQR乗車券の大きさの違いだ。Impress Watchの報道によると、券面は30×57.5mmから57.5×85mmへ大きくなり、特急券と同じサイズになる。
図からわかるのは、改札を通るきっぷの面積がひと回り大きくなるという物理的な変化だ。理由は読み取り方式の違いにある。磁気のきっぷは、改札機の中で紙を挟み込み、磁気ヘッドでストライプをなぞって情報を読み取り、場合によっては出場情報を書き込んで排出する。この一連の動きのために、小さな可動部品が機構の中に組み込まれている。QRコードは券面を印刷した時点で情報が確定しており、読み取り側はカメラで撮影するだけで済む。紙を挟む・なぞる・排出するという可動の機構が、かざすだけの光学読み取りに置き換わる。
2024年5月29日の最初の共同発表は、この違いを「磁気乗車券用の機構の複雑さ、鉄道固有の専門性の高さから、中長期的な維持が難しい」と説明している。あわせて、リサイクル時の環境負荷や、紙づまりの低減も理由に挙げた。「挿入する」という動作自体をなくしてしまえば、挿入にまつわる故障も紙づまりも、原理的に起こりようがなくなる。
では、この変更は自分がよく使う路線では、いつ、どんな形で起きるのか。
2027年春に首都圏7社が続く
2026年10月13日、京成電鉄・京浜急行電鉄・仙台空港鉄道・東京モノレール・東武鉄道・JR東日本・北総鉄道の7社が共同で「QR乗車券のサービス開始について」を発表した。2027年春からサービスを開始する。対象は自動券売機で購入する近距離の普通乗車券で、Suica・PASMOなどの交通系ICカードはこれまでどおり利用の中心であり続ける。
改札の通り方はTXと同じで、入場時は改札機のQRコードリーダーにかざし、出場時も同様にかざしたうえで回収箱に投入する。QR乗車券に対応した自動改札機がない駅では、有人窓口を利用することになる。7社の全路線・全駅で利用できる予定だ。7社は共通のQR乗車券管理サーバーを使うため、会社をまたいだQR乗車券の発券・利用もしやすくなるという。ただし、具体的に何がどう変わるのかは、2024年の最初の発表以来まだ詳しく説明されていない。
今回の7社一斉の発表に先立って、個別に動き出していた会社もある。東武鉄道は2026年4月30日、2027年春からQR乗車券の運用を始めると単独で発表しており、磁気定期乗車券の販売はすでに2026年3月13日に終了している。JR東日本も2026年6月9日、近距離乗車券を2027年春からQR化する方針を単独で示していた。今回の7社共同発表は、こうした個別の表明をひとつにまとめ、開始時期をそろえたものにあたる。2024年の最初の発表では「2026年度末以降に順次」としか示されていなかった時期が、今回で「2027年春」という具体的な季節まで絞り込まれたことになる。
ここまでの発表を時系列で並べると、次のようになる。
- 2024年5月29日: JR東日本など8社が移行の方針を共同発表。時期は「2026年度末以降に順次」
- 2026年1月14日: つくばエクスプレスがQR乗車券システムの導入を単独発表。10月1日に磁気乗車券を全廃
- 2026年4月30日: 東武鉄道が2027年春のQR運用開始を単独発表
- 2026年6月9日: JR東日本が2027年春のQR化方針を単独発表
- 2026年10月13日: 7社が共同で「QR乗車券のサービス開始について」を発表し、2027年春に時期をそろえる
今回発表された7社の顔ぶれを、最初の発表と見比べてみると、実は同じではないことに気づく。
発表のたびに顔ぶれが変わっている7社
磁気乗車券からQR乗車券への移行は、2024年5月29日にJR東日本・京成電鉄・京浜急行・新京成電鉄・西武鉄道・東京モノレール・東武鉄道・北総鉄道の8社が共同発表したのが最初だ。2025年に新京成電鉄が京成電鉄に吸収合併され、8社は7社になった。ここまでは単純な数の変化だ。
ところが、今回(2026年10月13日)発表された7社の顔ぶれは、京成電鉄・京浜急行電鉄・仙台空港鉄道・東京モノレール・東武鉄道・JR東日本・北総鉄道になっている。2024年の8社にあった西武鉄道が入っておらず、2024年の発表にはなかった仙台空港鉄道が加わっている。2024年の記事と並べて読むまで、自分はこの入れ替わりに気づかなかった。
2024年11月27日の発表によると、西武鉄道は2027年3月までに小竹向原駅を除く全91駅にタッチ決済・QR乗車券対応の改札機を整備する計画だ。一方で磁気乗車券の廃止そのものは「中期的に順次廃止していく」というにとどまり、2027年という確定した日程は示していない。改札機の整備時期は決めても、磁気廃止の時期はまだ固めていない。自分には、これが今回の7社に西武鉄道が入っていない理由に見える。ただし、この点を西武鉄道・JR東日本のどちらの発表も明言しておらず、理由そのものは確認できていない。
西武線をよく使う読者にとっては、2027年春に一斉に何かが変わるわけではなさそうだ、ということだけは今の時点で言える。
まとめ
磁気のきっぷからQRへの切り替えは、つくばエクスプレスではすでに実行済みだ。2027年春にはJR東日本・京成電鉄・京浜急行電鉄・東武鉄道・北総鉄道・東京モノレール・仙台空港鉄道の7社が続く。改札は挿入からかざす動作に変わり、きっぷの大きさも特急券と同じ57.5×85mmへひと回り大きくなる。
対象はICカードではなく紙の近距離きっぷに限られるので、ふだんICカードで乗っている人の生活はそのままだ。西武線のように、2024年の最初の発表に名前があっても今回の7社には入っていない路線もあり、確定した日程はまだ出ていない。自分がよく使う路線が今回の7社に入っているかどうかで、来年の春に何が変わるかが決まる。
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