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Raspberry PiでAirDropを受け取れる「LilBitDrop」が公開

テクノエッジの松尾公也氏が、Raspberry Piと中古の無線LANアダプターでAirDropを受信できる「LilBitDrop」を開発し、GitHubで公開した。対応チップが絞られる理由も分かる。

緑色の基板にヒートシンクとポート類が並ぶコンピューターボードの写真(イメージ写真)

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Mathias Wouters on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

iPhoneを持つ友人から「さっきAirDropで送ったよ」と言われたのに、自分の画面には何も届かず気まずい思いをしたことはないだろうか。AirDropはMacとiPhone、iPad同士なら一瞬で写真を送り合えるのに、WindowsやAndroidの持ち主はこの輪に入れない。

テクノエッジ編集部の松尾公也氏は、この壁をRaspberry Pi 1台で越える受信機を作り、「LilBitDrop」としてGitHubで公開した。中身はApple独自の無線方式をソフトウェアで再現したオープンソースのプロジェクトで、2026年10月10日に公開の経緯を記した記事が出ている。

AirDropがAppleの外に出ない理由

AirDropが使っているのは、普通のWi-Fiとは別物の通信方式だ。AWDL(Apple Wireless Direct Link)というApple独自の規格を使う。Apple公式サポートによると、AirDropが動く最低条件はiOS 7・iPadOS 13・OS X 10.10だ。テクノエッジの記事は、AirDropが初めてiPhoneに載ったのは2013年のiOS 7で、対象はiPhone 5以降だったと伝えている。14年以上前の機種から今も動き続けている計算になる。

Androidは長らくこの輪の外だったが、最近は風向きが変わりつつある。Googleのヘルプページによると、Quick Shareの「AirDrop互換」機能でiPhoneから写真を受け取れる条件は次のとおりだ。

  • Pixel: Pixel 9以降(Pixel 9aを除く)
  • 他メーカー: Samsung・Oppo・OnePlus・Vivo・Xiaomi・Honor・Transsion・Motorolaの一部機種(具体的な機種名は非公開)

9to5Googleの記事は、この機能が2026年2月17日からPixel 9シリーズへ段階的に提供されたと報じている。

なぜ対応機種がこれほど絞られるのか。Android Headlinesの記事は、アナリストのMax Weinbach氏のX投稿を引用している。そこでは、AWDL対応にはチップレベルの作り込みが要り、ソフトの更新だけでは解決しないという見方が示されている。この見方が正しければ、対象は近年の上位機種のWi-Fiチップに限られる。同じ壁に、Raspberry Piで受信機を作ろうとした松尾氏も別の形でぶつかることになる。

Raspberry Piで動かす条件

松尾氏が土台にしたのは、opendrop-rsというオープンソースのプロジェクトだ。AWDLの通信部分を受け持つ「filin」と、AirDropの受信を受け持つ「luftlift」の2つで構成される。Linuxの上でAWDLをソフトウェア的に再現する仕組みだ。

必要な機材は2つだ。

  • Debian Linuxを載せたRaspberry Pi 4
  • 無線通信を担当するUSB Wi-Fiアダプター

ここまでは特別なものではない。ハードルになるのは2つ目の条件だ。アダプターには「モニターモード」という、自分で組み立てた電波のデータをそのまま送り出す機能が要る。モニターモード自体に対応する製品は珍しくない。しかしopendrop-rsのREADMEによると、AWDLが要求するデータフレームの注入と時刻合わせの両方をこなせるチップは限られる。確認されているのは、Atheros AR9170/carl9170というチップを積んだ製品だけだという。現行の新品では見つからず、松尾氏は中古のNEC製アダプターを探して購入している。

ここまでで、AirDropの受信は「普通のWi-Fiアダプターをつなぐだけ」では済まないことが分かる。では、なぜそこまでチップを選ぶのか。

無線LANチップが絞られる理由

AWDLでつながる端末同士は、時刻合わせをしたうえで「この瞬間はこのチャンネルにいる」という予定表を共有している。受信側も、相手が自分を探しに来るタイミングに合わせてそのチャンネルで待ち構えていなければ、呼びかけに気づけない。普通のWi-Fi接続のように、いつでも同じチャンネルで待っていればよいわけではない。

この精度がどれだけ厳しいかは、数字で見るとはっきりする。opendrop-rsのREADMEは、Atheros carl9170(AR9170)を「時刻合わせも良好」な対応チップとして挙げている。一方でRealtekのRTL8822BUは、モニターモードでデータフレームを送信できずAirDropの通信自体を運べないと記している。テクノエッジの記事はさらに踏み込み、opendrop-rsの作者の計測としてAWDLの許容範囲を外れたフレームの割合を紹介している。その数字は、AR9170で約0.4%、RTL8822BUで12〜21%だった。

0510152025%Atheros AR9170: 0.4%Realtek RTL8822BU: 12〜21%Realtek RTL8822BU: 12〜21%0.4%12〜21%Atheros AR9170Realtek RTL8822BU

外れた割合は、低く見積もっても30倍違う。この差が、AR9170でなければ安定してAirDropを受信できない理由だ。自分はこの数字を見て、前の節で見たAndroidの対応機種の少なさとつながった感覚があった。AirDropに対応できるかどうかは、結局のところWi-FiチップがAWDLの時刻合わせにどこまで追従できるかで決まる。PixelがAirDrop互換を一部の新しい機種に絞っているのも、Raspberry Piが特定の中古チップしか選べないのも、同じ制約の表れだった。

どのくらいの速さで届くのか

チップが決まっても、すぐに実用になったわけではない。テクノエッジの記事は、動かすまでに直した不具合を具体的に記録している。

動かすまでに直した3つの不具合

  • 速度が出ない: 転送速度は秒速約150KBにとどまり、iPhoneが途中で送信をあきらめていた。受信確認の返事を待つ判断を、予定表ではなく実際のチャンネルを見る方式に直した
  • 圧縮されていない部分を読めない: AirDropはJPEGのように、それ以上縮まないデータをそのまま詰めて送る。luftliftはこの形式に対応しておらず、実際のデータを解析して対応させた
  • 「これで終わり」の合図が来ない: 検証に使ったiOS 27は、転送終了を示す合図を送ってこなかった。中身のアーカイブが終わった時点で受信完了とみなす処理に変更した

3つを直した結果、3.7MBの写真が約7秒で届くようになった。さらに、受信機がiPhoneの共有シートからすぐ消えてしまう問題も直した。時刻だけ周りに合わせ、待ち受けチャンネルは自分で固定する方式に変えたところ、起動から11秒で検出されるようになった。2.85MBの写真は約2.2秒で転送できている。

受け取った写真は、Raspberry PiにUSBケーブルでPCをつなぐと取り出せる。Raspberry PiのUSB-C端子がネットワーク機器として振る舞い、ブラウザでhttp://10.55.0.1:8080/を開くと受信した写真が並ぶ。Windowsでは「RNDIS」、Mac・Linuxでは「ECM」という方式を自動で切り替える。どちらの環境でもダウンロードできたと、テクノエッジの記事は伝えている。電源を入れてから受信機が立ち上がるまでは約25秒かかるという。

今から試せる条件と残る課題

LilBitDropはGitHubでGPL-3.0ライセンスで公開されている。試すにはRaspberry Pi 4とDebian Linux、そしてAtheros AR9170/carl9170チップを積んだ中古のUSB無線LANアダプターが要る。現行の新品では流通しておらず、入手性は低い。

この記事が当てはまるのは、対応チップを積んだアダプターを用意できる場合に限る。それ以外にも、現時点ではAndroid端末への直接転送には対応しておらず、写真はいったんPC経由で取り出す必要がある。iOS 27で受信機を発見させる仕組みが変わった例もあり、今後のiOSの更新で動かなくなる可能性も残っている。テクノエッジの記事はこれらを今後の課題として挙げている。

まとめ

AirDropはApple独自の無線方式AWDLの上に成り立つ。時刻合わせの精度についていけるWi-Fiチップでなければ、送受信の輪に入れない。この制約が、Androidの対応機種の少なさとRaspberry Piの部品選びの両方を説明していた。

松尾氏はこの制約の中で、Atheros AR9170/carl9170チップのアダプター1枚とRaspberry Pi 4を組み合わせた。3.7MBの写真を数秒で受け取れるところまで仕上げ、GitHubで公開している。部品の入手性やAndroidへの直接転送、iOSの今後の更新といった課題は残る。それでも「つなぐだけでAirDropに対応する」という方向性は、動くものとしてすでに形になっている。

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