Litmus — 話題のニュースを、深く読み解く。 RSS
ソフトウェア

「どこでもロケハン」で実在の街を3D化しマンガ背景を描ける

個人開発の無料ツール「どこでもロケハン」は、OpenStreetMapの建物データを高さ方向に立ち上げ、世界のほぼどこでも好きな角度の線画背景を書き出せる。

屋外でノートにペンで建築物をスケッチしている手元の写真(イメージ写真)

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Sami Raad on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

このシーン、あの交差点を背景に描きたい。でも、ちょうどいい角度の写真が見つからない。実際にロケハンに行ける距離でもないし、行く時間も取れない。そんな検索と妥協を繰り返した末に背景を仕上げた経験は、マンガやイラストを描く人なら覚えがあるはずだ。

2026年10月18日にGIGAZINEが紹介した無料ツール「どこでもロケハン」は、個人開発者のシャープ氏(おやすみゲーム開発部)が公開した。地図に登録されている建物のデータを3Dに立ち上げ、実在するほぼどんな場所でも、好きな角度・好きな高さから見た線画の背景資料を無料で書き出せる。商用・非商用を問わず使える。

地図のデータだけで、なぜ立体の絵になるのか。日本以外の場所でも、同じように描けるのか。順番に見ていく。

何ができるツールか

「どこでもロケハン」を開くと、何ができるのか。開いてまず目に入るのは、渋谷のスクランブル交差点だ。これは制作者が選んだ初期表示で、ここから好きな場所へ移動できる。公式の使い方ページによれば、操作の流れは次のとおりになる。

  • 地名・住所・緯度経度を入力して「探す」を押す、または用意された名所の一覧から選ぶ
  • 「広さ」と「遠景」の範囲を決める
  • ドラッグで視点を回し、マウスホイールで寄り引きする
  • 「カメラをここへ」で指定の場所へ移動し、「目の高さで立つ」で人の目線まで下げる
  • カラー・カラー+線・線画・線画+トーン・白模(白い模型風)の5種類から描き方を選ぶ。「線」スライダーで線全体の太さを、「輪郭」スライダーで建物ごとの輪郭線の太さを調整できる
  • PNG・SVG・GLB・FBX・OBJのいずれかで書き出す

場所の検索機能は利用が集中しているため、公式サイトは名所の一覧から選ぶことを勧めている。検索のたびに地図データの取得先サーバーへ負荷がかかるためだという。一覧には東京や日本各地だけでなく、海外の名所も候補として用意されている。

ここまでは、見慣れた地図アプリの操作に近い。マウスでのぞき込んでいるこの街並みは、ただの地図画像を切り取っているだけなのか。

なぜ建物が立体になるか

なぜ、ただの地図データから立体の街並みが生まれるのか。ここで使われている地図データは、世界中の誰でも編集に参加できる地図データベース「OpenStreetMap」だ。道路や建物の形だけでなく、建物の高さや階数が登録されていることもある。

地図データの輪郭 高さぶん押し出す 高さタグ/推測 目の高さ 見下ろす高さ

図は、公式の使い方ページが説明する建物の作り方を模式化したものだ。地図データにある建物の輪郭(2Dの矩形)を、高さの分だけ垂直に押し出すだけで3Dの箱ができる。できた箱は、人の目の高さに置いたカメラからも、上空から見下ろす高さに置いたカメラからも、同じ建物として破綻なく見える。

押し出す高さは、どこから来るのか。公式の使い方ページは「建物の高さは、地図データにあればその値(高さか階数)を使い、無ければ用途と広さから推測します」と説明している。実測の高さが登録されている建物と、推測で補われる建物が混在している。カメラとの距離に応じて、建物の作り方そのものも変わる。

  • 遠くの建物: 輪郭を高さぶん押し出しただけの、屋根・窓・階の線が入ったシルエット
  • カメラに近い建物: 窓の奥まりやベランダなど、遠くからは分からない形まで作り直したもの

この仕組みのおかげで、遠くの建物は輪郭だけのシルエットでも、近づいて描きたい建物は資料として使える密度の線が手に入る。

自分はここで、ふだん眺めている地図が上から見た影絵でしかないことに初めて気づいた。影絵に高さを足しただけで、カメラをどこに置いても破綻しない街が立ち上がる。建物の正確さは、その建物の高さが地図データに登録されているかどうかで決まる。ビルの外壁に看板を描き込むような、高さの正確さがコマの説得力に直結する場面ほど、この違いの影響を受ける。

では、この立体の街を、自分が描きたい構図でちゃんと書き出せるのか。

自由な角度で書き出せるか

好きな構図で、どんな形式に書き出せるのか。地面から見上げるアングルも、真上から見下ろす俯瞰も、建物のデータそのものが3Dである以上、カメラをどこに置いても破綻しない。「目の高さで立つ」を選べば、人の目線ちょうどの高さまでカメラが下がる。現地で写真を撮らなければ手に入らなかった構図が、画面の中だけで完成する。3D表示はブラウザ上で動くthree.jsというライブラリが担っており、一度街が組み上がったあとはサーバーとやり取りせずにその場で角度を変えられる。

設定と書き出し形式

範囲の設定は2つある。公式の使い方ページによると、広い範囲を選ぶほど組み立てに時間がかかり、書き出すファイルも大きくなりすぎるため、狭い範囲での利用が勧められている。

設定選べる範囲何を決めるか
広さ200m〜1km細かく作り込む範囲
遠景なし・2km・4km周囲の街と地平線までの地形の範囲

書き出し形式は5種類ある。

形式向いている使い方
PNGそのまま下描きに重ねる画像として使う
SVG線画をベクターのまま編集する
GLB・FBX・OBJ3Dソフトに読み込んでアングルを作り直す

画像だけでなく3Dのモデルデータとしても持ち出せるため、あとから別の3Dソフトでアングルを作り直すこともできる。選んだ場所とカメラの位置は「リンクをコピー」で保存でき、あとから同じ構図に戻れる。続きのコマで同じ街の別角度を描きたくなったときも、一から場所を探し直さずに済む。シリーズ物で同じ街を何度も舞台にする場合は、このリンクを使い回せば構図の一貫性も保ちやすい。

ここまでは申し分ない。気になるのは、この精度が日本以外の場所でも同じように出るのかという点だ。

日本以外でも使えるか

海外の街でも、同じ精度で描けるのか。公式の使い方ページは「現在は日本とイタリアの街並みのみ再現しており、ほかの国では形が少し簡単になります」としている。信号や電柱は実際の配置をなぞるのではなく、推測で補われる。舞台にしたいのが日本やイタリア以外の街なら、建物の輪郭までは立体になっても、細部までは資料として過信できない。

地図データの欠けや誤りにより、建物の高さや形が実際と違う場所や、書かれていない建物があることもあるという。舞台にしたい建物が、地図の情報不足でうまく再現されないことはありうる。

商用・非商用を問わず作った絵を使えるが、公開する作品には「©OpenStreetMap contributors」の表記が必要になる。遠景を使った場合は「©OpenMapTiles」も添える。地図データはODbLというライセンスで配布されており、この表記は商用・非商用を問わず利用条件として求められているものだ。

まとめ

「どこでもロケハン」は、地図に登録された建物の輪郭と高さを押し出し、立体の街並みを作るツールだ。実在するほぼどんな場所でも、カメラを自由な角度・高さに置いた線画の背景資料を無料で書き出せる。地図データに高さの情報があるかどうかで建物の正確さが変わり、日本とイタリア以外では建物の形が簡略になる。商用利用もできるが、公開時には地図データの出典表記が必要になる。現地に行けなくても、人の目の高さに立った一枚を描けるようになったことは、背景探しに疲れていた自分にとって大きな変化だった。

この記事の先を読む本を探す

特定の本を勧めるものではありません。検索結果から、いまの版と目次を確かめて選んでください。

コメント

気づきや感想をどうぞ

記事への補足や、読んで考えたことをお寄せください。個人情報や、他の人を傷つける内容の投稿はお控えください。

コメントを読み込んでいます…

    ほかの記事

    最新の記事 →