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Discordを離れずに自分のサーバーも持てる「Harmony」

無料のオープンソースチャット「Harmony」は、既存のDiscordサーバーとメッセージを双方向に同期しながら、広告や投資家に頼らない自分の場所を持てる。ActivityPubで他のSNSと繋がる仕組みを確かめた。

青みがかったネオン照明の中、ヘッドセットを着けてパソコンの画面を見つめる2人の男性

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Ron Lach on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

気に入っているDiscordサーバーがある。そこの空気や人付き合いは手放したくないが、企業が運営するサービスである以上、ある日突然ルールや収益化の方針が変わるかもしれない。そんな不安を拭えないまま使い続けている人は少なくないはずだ。

無料のオープンソースチャット「Harmony」は、今のDiscordサーバーを手放さずに、そこと会話が同期する自分たち運営のサーバーを無料で持てるようにする。移行ではなく、併存から始められる。何が同期して何が同期しないのか、そして見た目の裏に何があるのかを順に確かめる。

Discordを離れずに済む理由

答えは「ブリッジ」という機能にある。Harmony側のサーバー設定から「Discordブリッジ」を選ぶと、既存のDiscordサーバーとHarmonyのサーバーをつなげられる公式サイトの機能一覧。チャンネルごとに、メッセージを双方向に同期できる。つまりDiscordを解約する必要がない。

Harmony自体は、公式サイトで「広告・トラッキング・投資家はない」と明言しているオープンソースのチャットアプリだ。サーバー、チャンネル、スレッド、ロールによる権限管理など、画面の作りはDiscordに近い。

Gigazineの記者は実際にこの手順を踏んでいる。Discord Developer Portalでボットを作って権限を設定し、取得したトークンをHarmony側に渡す。表示されたdocker-composeの内容を保存して起動し、ボットをDiscordサーバーに招待したあと、同期したいチャンネル同士をペアにする。最後にHarmony側から送った文章がDiscordにも届けば完了だGigazineの記事。移行作業というより、もう一つの窓口を増やす作業に近い。

ブリッジが同期しないもの

ただし、ブリッジが同期するのはテキストに限られる。Gigazineの記事が明記している制限は次の2つだGigazineの記事。

  • 音声通話・ビデオ通話はブリッジの対象外になる。両方のサーバーで別々に話す必要がある
  • ブリッジを止めていた間の投稿は、再開後に自動で遡って取得されない

この条件は、本文の判断に関わるのでここで示しておく。「Discordの会話がまるごと複製される」わけではなく、同期対象は自分で選んだテキストチャンネルに限られる。

裏側はActivityPubで動く

ここまでは「Discordに似たチャットがもう一つ増える」という話に見える。だが、Harmonyの正体はそれだけではない。

X(旧Twitter)からMastodonに移った人の多くが、フォロー関係や過去の発言を持ち込めず、ゼロから積み直すことになった。あるSNSから別のSNSへ引っ越すとき、普通はそうなる。

Harmonyは、この「引っ越し」を前提にしていない。採用しているのはActivityPubという、MastodonやMisskeyがすでに使っている連合(フェディバース)の規格だ。README原文にはこうある。

ActivityPub timelines, follows, and federation with other instances

ActivityPubのタイムライン、フォロー、他インスタンスとの連合を備える、という意味だ。Harmonyのユーザーは、Harmonyの外にいるMastodonの利用者をフォローしたり、フォローされたりできる。

さらに踏み込んだ機能もある。同じREADMEは、1つのサーバーに別ドメインのHarmonyの参加者が同席できる仕組みをこう説明する。

Multi-instance servers (members from different Harmony domains in one server)

1つのサーバーの参加者が、全員同じ会社の同じドメインに登録している必要はない。

自分はここで一度止まった。見た目がDiscordのクローンだったので、てっきり「Discordの代替品」の話だと思っていた。実際に繋がる相手はDiscordの外側、しかもMastodonのような別のサービスの利用者にまで及んでいた。1つの会社のサービスの中に閉じていない、というのがHarmonyの実質的な違いになる。

この連合の仕組みは、サーバーを乗り換えても人間関係が消えない設計だと言い換えられる。では、こうした仕組みを無料で保っている運営は、何を条件に成り立っているのだろうか。

広告も投資家もない代わりに

HarmonyのライセンスはAGPL-3.0に、帰属表示と商標に関する追加条項を加えたものだ。README原文はこう書いている。

GNU Affero General Public License v3.0 with additional terms under AGPL §7 (attribution + trademark)

追加条項の具体的な中身は、次の一文だ。

Forks must rename and keep the “Powered by Harmony” link to the original repository visible.

フォークする場合は名称を変更し、元リポジトリへの「Powered by Harmony」リンクを見える形で残す、という条件になる。ソースコードは無料で公開されているが、それを元に別のサービスとして配り直すなら、出どころを示すリンクを消せない。

無料・オープンソースという言葉だけを見ると「何の縛りもない」ように聞こえる。だが実際には、「広告・投資家に頼らない代わりに、由来を隠さない」という具体的な条件とセットになっている。公式サイトには、運営は寄付と、別料金のホスティングサービスで支えられているとある。ホスティングの価格は2026-11-08時点で公開されていない公式サイト。価格を待たずに試す方法もある。自分でサーバーを用意するセルフホストだ。

自分で動かすには

セルフホストする場合、Linuxサーバー上で公式のインストールスクリプトを実行する流れになる。Dockerの有無、ポート80/443の空き、DNSの向き先を順に確認し、証明書とデータベースを自動で準備する。導入後の運用は、次のコマンドで行う。

  • harmony update: 更新前に自動でバックアップを取ってから更新する
  • harmony doctor: サーバーの状態を診断する
  • harmony backup / restore: バックアップの作成と復元

推奨メモリ・CPUなど具体的なスペックは、2026-11-08時点の公式ドキュメントに記載がない。

開発の勢いは早い。GitHubのリリース一覧によれば、2026年10月20日の v1.8.8 から11月7日の v1.9.4 まで、3週間弱で10回リリースされている。間隔のほとんどは1〜3日で、一度だけ8日空いた回があった。

現在進行形で動いているぶん、評価はまだ割れている。Gigazineが紹介するHacker Newsの反応は対照的だ。2,600人規模のDiscordサーバーを管理する利用者は、ブリッジ機能を「とてもよく考えられた機能」と評価した。別の利用者は「バグや信頼性の低下が予想される」と懐疑的な見方を示したGigazineの記事。使うなら、枝分かれしたばかりの道具だという前提で試すことになる。

まとめ

Harmonyは、今のDiscordサーバーを解約せずに自分たち運営のサーバーを無料で持てるオープンソースのチャットアプリだ。テキストチャンネルは双方向に同期できる。音声・ビデオ通話はブリッジの対象外で、同期していなかった間の投稿も遡れない。

見た目はDiscordに似ているが、裏側はActivityPubという連合の規格で動いている。HarmonyのサーバーはMastodonなど他のSNSの利用者とも、フォロー関係で繋がれる。広告や投資家がいない代わりに、AGPLライセンスの追加条項として「Powered by Harmony」の表示義務が課されている。

セルフホストの手順は公式に用意されている。直近3週間で10回のリリースが重なるほど開発が活発な段階でもあるので、まずはWeb版(har.mony.lol)で画面を触ってみるところから試すのが現実的だ。

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