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Qiitaの技術記事、生成AI以後に増えたのは「しましょう」口調ではなく語彙だった

Qiita記事7万件を8年分数えた分析で、AIっぽいと言われる「〜しましょう」口調はむしろ減り、増えたのは記事の長さ・太字・箇条書きと「実測」「効く」のような語彙だった。

白いキーボードに向かって文章を打つ手元のクローズアップ

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by RDNE Stock project on Pexels

技術ブログを読んでいて、「地味に効きます」「静かに壊れる」のような言い回しに、前より出会う気がすることはないだろうか。太字と箇条書きも心なしか多い。ただの気のせいかもしれないし、生成AIが書いた(書かせた)文章が増えたせいかもしれない。

その体感を、個人ブログが実際に数えて確かめていた。対象は2019年から2026年までの各年8月にQiitaへ投稿された記事だ。合計70,524件をQiita APIで取得し、50,731件を分析した逆瀬川ちゃんの調査になる。結果を先に言うと、記事の作り自体は確かに変わっていた。ただし、変わり方は「AIっぽい」という言葉から連想する方向とは少しずれていた。

英語圏では、似た調査がすでにいくつかある。この記事が紹介しているものでは、論文の要旨にAIっぽい語が増えた分を数えて、2024年の要旨の少なくとも13.5%がLLMで処理されたと推定した研究がある。日本語の技術記事を同じように数えた分析は、これまで見当たらなかったという。気になるのは、記事の何がどう変わったのか、そして「AIっぽい」と言われる口調は本当に増えたのかだ。まずは記事の骨組みから見ていく。

記事の骨格は、数字で見てもはっきり変わっていた

記事の骨組みは、具体的にどれくらい変わったのか。この調査は、2022年11月のChatGPT公開より前の2019〜2022年を「AI以前」とする。その4年間の伸び方をそのまま延ばした「予測値」(AIがなかったとしたら2026年はこうなっていたはずという仮想の値)を作り、実際の2026年の値と比べる設計だ。単に「増えた・減った」ではなく、AI以前から続いていた伸びの分を差し引いて見ている。

その結果、記事の骨格に関わる指標は、予測値を大きく超えて伸びていた。

指標AI以前の平均予測値2026年変化
地の文の文字数976字994字1,914字約2.0倍
太字(1,000字あたり)1.26個1.27個3.83個約3.0倍
箇条書きの割合8.9%8.0%16.4%約1.8倍
平均文長35.4字38.9字39.2字予測値並み

コードや表を除いた文章部分(「地の文」と呼ばれる)の文字数、太字の頻度、箇条書きの割合は、いずれも予測値を大きく上回って増えている。一方、1文の長さは35.4字から39.2字に伸びていたが、予測値も38.9字とほぼ同じだった。文が長くなったこと自体は、AI以前からすでに始まっていた傾向で説明できる範囲になる。「AIで文が長くなった」と早合点しそうになるが、この記事が確かめたいのは、AI以前の傾向を超えて動いた部分だけだ。では、記事の「作り」ではなく「口調」はどうか。

でも「AIっぽさの代名詞」は逆に減っていた

記事が長く、太字と箇条書きが多くなったのなら、「〜しましょう」のような呼びかけ口調も増えていそうなものだ。生成AIが書く文章の特徴として、真っ先に名前が挙がる言い回しでもある。自分もそう思って表を見たので、最初は数字を読み間違えたのかと二度見した。

ところが数えてみると、逆だった。

指標(1,000字あたり)AI以前2026年
文末の「しましょう」0.114個0.034個
感嘆符0.93個0.29個
文頭の「また、」0.207個0.119個

「しましょう」を含む記事の割合も10.3%から6.0%に下がっている。です・ます調とだ・である調が混ざった記事の割合は48%から31%に下がり、文体が統一される方向に動いていた。「AIっぽい」の目印としてよく挙がる口調は、実際には増えていない。むしろ落ち着いた方向に動いていた。

変化なし 1.0倍 地の文 2.0倍 太字 3.0倍 箇条書き 1.8倍 しましょう 0.3倍 感嘆符 0.3倍

基準線の1.0倍から右に伸びる棒(地の文・太字・箇条書き)と、左に縮む棒(しましょう・感嘆符)が同時に存在する。「AIっぽくなった」という変化は一様な増加ではなく、増えた要素と減った要素の両方でできている(逆瀬川ちゃんの調査の実測値をもとに作成)。

増えたのは口調ではなく語彙だった

口調が増えていないなら、何が増えたのか。答えは語彙だった。AI以前は0.5%以下の記事にしか出てこなかったのに、2026年には著者単位で見ても明らかに広がった語が385語見つかっている。

AI以前2026年よく見る言い回し
実測0.1%7.2%実測では、〜の実測値
既定0.5%7.1%既定では、〜は既定で
入口0.4%6.8%〜の入口として
事故0.3%6.8%〜という事故、事故を防ぐ
効く2.0%22.3%〜が効いてくる、地味に効きます

多いものは含む記事の20%を超えるまで広がっている。この増加が、言い換えなのか単に足されたのかも調べられていた。「既定」が増えたなら「デフォルト」は減ったのか、というのが最初の疑問だ。1万字あたりの頻度で確かめたところ、「デフォルト」は1.88回から1.01回に減り、「既定」は0.05回から0.55回に増えていた。一部は置き換わったとみてよさそうだ。ところが「要点」(0.03回→0.14回)と「ポイント」(1.31回→2.05回)は、どちらも増えている。こちらは言い換えではなく、語が単純に足された例になる。

つまりこういうことだ。呼びかけの口調や感嘆符のような「話し方」は落ち着いた一方、既定・入口・事故・効くのような、物事を比喩的に説明する語彙は広がっていた。文体は大人しくなり、語彙は増える。この2つが同時に起きていたのが、2026年のQiitaの記事だった。

記号にも変化がある。ダッシュ「—」「―」は1,000字あたり0.04個から0.43個へおよそ10倍に増えた。逆瀬川ちゃんの記事は、英語圏でChatGPTのダッシュ(em dash)多用が「ChatGPT hyphen」と話題になったことがある、と触れている。日本語の技術記事でも、同じ記号が目立って増えていたことになる。見出しに「まとめ」がある記事の割合も12%から52%へ、半数を超えるまで増えていた。ここまでではっきりしたのは、記事の作り・口調・語彙がそれぞれ動いたという事実だ。では、その動きの理由をどこまで言えるのか。

これはAIが書いた文章が増えたということなのか

ここまでの結果は、逆瀬川ちゃん個人による分析であり、Qiita株式会社の公式見解ではない。その前提の上で、この調査自身がいくつかの限界を認めている。

もっとも大きいのは、AIが書いた文章そのものが増えたことと、人間の書き方がAIの影響で変わったことを、この分析だけでは区別できない点だ。AI関連のタグが付いた記事を除いても結果はほとんど変わらなかったというが、タグの付いていない記事にAIの話題が含まれる可能性は残る。

ほかにも、この調査自身が挙げている留保がある。

  • 比較対象は各年8月の記事だけで、他の月で同じ傾向が出るかは確認されていない
  • AI以前の記事は2026年9月まで削除されずに残ったものだけで、当時と条件が完全にそろっているわけではない
  • Qiitaの編集画面自体の変化(画像の入れ方など)が、太字や箇条書きの指標に影響した可能性も残る

それでも、無関係とは言い切れない事情もある。コーディングエージェント(ClaudeCode、Codex、Cursorなど)のタグが付いた記事は、2025年8月の3.1%から2026年8月には9.5%に増えている。コードだけでなく、記事を書く作業自体にエージェントが関わる機会が増えたことと、この変化はつながっていそうだ。

まとめ

Qiitaの技術記事を8年分数えた実測分析によると、2026年の記事は地の文の長さがおよそ2倍、太字がおよそ3倍、箇条書きの割合がおよそ1.8倍に増えていた。一方、「AIっぽさ」の目印として語られがちな「〜しましょう」口調や感嘆符はむしろ減り、文体は統一される方向に動いていた。増えていたのは口調ではなく、「実測」「既定」「入口」「効く」のような、物事を比喩的に説明する語彙だった。

AIが書いた文章そのものが増えたのか、人間の書き方が変わったのかは、この分析だけでは切り分けられていない。次に技術記事を読むとき、「AIっぽさ」を口調だけで判断すると見誤るかもしれない、というのがこの調査から言えることだ。

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