Macのターミナルに一行打つだけで、Apple自身のAIモデルと話せるようになった。2026年9月14日に配信が始まったmacOS 27には、fmというコマンドが標準で入っている。追加のインストールも、利用のための契約も要らない。ちょっとした文章の下書きや、テキストの分類をAIにやらせたいけれど、そのためだけに何かを用意するほどではない、と思っていた人には、試す理由になる話だ。
fmで具体的に何ができるのか、自分のMacで動くのか、そして手元だけで済まない処理はどうなるのか。順に確かめた。
fmコマンドで何ができるか
fmコマンドは、大きく3つの使い方に分かれる。1つ目はfm respondで、質問を渡すとその場で回答が返る一問一答の形になる。2つ目はfm chatで、こちらは対話を続けられるインタラクティブなモードだ。会話の途中で/modelと打てばモデルを切り替えられ、/saveで会話を保存できる。3つ目はfm schemaで、回答をJSON形式の決まった構造で受け取りたいときに使う(WWDC26セッション334)。
公式セッションのコード例では、次のような使い方が示されている。
fm respond "Provide a basic regex in Swift to parse an email address"— 単発の質問を投げて回答をもらうfm respond "What app is the user using in this screenshot?" --image Screenshot.png—--imageオプションで画像を渡し、その内容について答えさせるfm schema object --name AppsIdentified --string app_names --array > schema.jsonのあとにfm respondへ--schema schema.jsonを渡す — 決まった形式のJSONで結果を受け取る
自動化スクリプトに組み込みやすいのはfm respondで、fm chatはアイデアを探ったり、動作を試したりする用途に向くと説明されている。Xcodeを開いてSwiftのコードを書かなくても、ターミナルの1行でAppleのAIモデルに質問できる。
あとは、これが本当に自分のMacで動くかどうかになる。
自分のMacで使えるか
動作には、Apple自身のAIチップを積んだMacが要る。fmは、設定アプリで見たことがある人もいるはずの「Apple Intelligence」の機能の一つとして提供される。macOS 27(コードネーム「Golden Gate」)でこの機能を使うには、M1以降のチップが必要だ(Apple公式サポート)。つまりIntel Macでは動かない。macOS 27自体は2026年9月14日に一般提供が始まった。対応するMacであれば、システムのソフトウェアアップデートから今すぐ入れられる(9to5Mac)。
Apple Intelligenceの機能は対応言語・地域も条件になる。デバイスの言語設定とSiriの言語設定を、サポートされている同じ言語に揃える必要がある。対応言語は英語のほか十数言語に順次広がっている(Apple公式サポート)。
要件を満たしていれば、あとはfm respondやfm chatを打つだけで済む。ただし、その裏では実はモデルが1つではない。
オンデバイスとPCCをどう使い分けるか
公式セッションには、次の2つのコマンド例が並んで出てくる。
fm respond "Provide a basic regex in Swift to parse an email address"
fm respond "Provide a comprehensive regex in Swift to parse an email address" --model pcc
見た目の違いは--model pccの有無だけだが、中身は別物になる。何も付けなければ、Macの中だけで完結する「オンデバイスモデル」が答える。--model pccを付けると、Appleのサーバー上で動く「Private Cloud Compute(PCC)」という、より大規模なモデルに切り替わる。公式セッションはPCCモデルについて「より複雑な問題に対応する」と説明している(WWDC26セッション334)。
| オンデバイスモデル(既定) | PCCモデル(--model pcc) | |
|---|---|---|
| 実行場所 | Macの中だけ | Appleのサーバー |
| APIキー・費用 | 不要、常に無料 | 不要だが利用量に制限あり |
| 向く処理 | 簡単な質問、定型的な分類 | より複雑な問題 |
表からは、費用の有無ではなく「どこまで無料で使い続けられるか」で2つが分かれていることが分かる。オンデバイスモデルは常時無料で使えるが、PCCモデルには利用量の制限があると公式セッションで説明されている。具体的な上限は公開されていないため、まとまった量の処理をPCCモデルへ任せる前に、少量で一度試しておくと安全だ。
つまり、まずfm respondをそのまま使ってみて、答えが物足りなければ--model pccを試す、という使い方が公式の想定に近い。自分はここが意外だった。オンデバイスとクラウドを使い分ける仕組みは知っていたが、コマンド1つのオプションだけで切り替えられるとは思っていなかった。
この記事が当てはまるのはM1以降のMac全般になる。ただし、表現力の高い応答などAppleが「AFM Core Advanced」と呼ぶ重いモデルを使う機能には、別の条件がある。M3以降で、ユニファイドメモリ12GB以上が目安として示されている(Apple公式サポート)。手元のMacが古い場合、動く機能の幅がここで変わる。
ここまではターミナルから直接コマンドを打つ場合の話になる。スクリプトに組み込みたいときはどうなるのか。
Pythonのスクリプトからも使えるか
Pythonから同じ仕組みを呼ぶための公式SDK「apple-fm-sdk」も用意されている。pip install apple-fm-sdkで導入できる。要件は次の4つだ(Foundation Models SDK for Python 公式ドキュメント)。
- macOS 26.0以上
- Python 3.10以上
- Xcode 26.0以上
- Apple Intelligence対応デバイス
fmコマンドとは違い、こちらはmacOS 26から使える仕組みで、macOS 27で新しく生まれたわけではない。GitHub上の公式リポジトリは、2026年9月22日時点で約1,200のスターを集めている(GitHub)。
公式セッションでは、次のような書き方が紹介されている。
import apple_fm_sdk as fm
INSTRUCTIONS = "You're an AI assistant for Cupertino Mart, a grocery store with in-app ordering."
async def answer_question(prompt: str) -> str:
session = fm.LanguageModelSession(instructions=INSTRUCTIONS)
return await session.respond(prompt)
利点は3つ挙げられている(WWDC26セッション334)。
- Xcodeを作り直さずにプロンプトを試せる
- pandasやmatplotlibといったPythonのデータ処理ライブラリと組み合わせられる
- Jupyter Notebook上で試作できる
ターミナルでさっと試すならfmコマンド、集めたデータをまとめて処理したいならPython SDK、という役割分担になる。
まとめ
macOS 27(2026年9月14日配信開始)には、ターミナルからApple純正のAIモデルを呼び出せるfmコマンドが標準搭載された。要点は次の4つになる。
fm respond(単発の質問)、fm chat(対話)、fm schema(構造化出力)の3つの使い方がある- 動作にはM1以降のApple Silicon搭載MacとmacOS 27が要る。Intel Macでは動かない
- 既定はMacの中だけで完結するオンデバイスモデルで無料。
--model pccを付けると、より複雑な処理に向くPrivate Cloud Computeモデルに切り替わるが、利用量に制限がある - Pythonから使いたい場合は、別途
pip install apple-fm-sdkで公式SDKを入れる
Apple Silicon搭載のMacでmacOS 27を使っているなら、今すぐ確かめられる。ターミナルを開いてfm respond "こんにちは"と打てば、それで動く。
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