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AIエージェント専用の「もう1台のMac」をターミナルに起動できる

OSSツール「terminal-mac」は、Apple純正の仮想化機構でmacOSを丸ごと起動し、画面をターミナルに映したままAIエージェントに操作を任せられる。無料・MITライセンスで公開された。

暗い背景にディレクトリの一覧が緑色の文字で表示されたターミナル画面

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Pixabay on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

Claude CodeのようなAIエージェントに「この画面を見て、ここをクリックして」と操作を任せたくなる場面が増えてきた。ただ、いざ任せようとすると、ログイン済みのメールやパスワードマネージャーが開いたままの自分のデスクトップがちらつく。そこまで信用していいものか、と手が止まる。

その迷いに対して、2026年11月6日に公開されたオープンソースツール「terminal-mac」は一つの答えを出した。自分のMacとは別に、エージェント専用の仮想macOSをまるごと1台起動し、その画面をターミナルの中に映したまま操作を任せられる。開発したのは、Amazonで機械学習エンジニアを務めるgovi氏。無料で、ライセンスはMIT(GitHubリポジトリ、2026-11-07確認)。

ターミナルで画面を直接見る

エージェント専用の作業環境を仮想マシン(VM)で用意する発想自体は新しくない。applech2.comの記事によれば、VMPalやGhostVMなど、同じ目的のツールがここ最近いくつも出てきているという。

ただ、VMを使う場合はふつう、VMの画面を見るために別のウィンドウを開く必要がある。ターミナルでエージェントに指示を出しながら、横でVMのウィンドウも見張る、という二度手間になりがちだ。

terminal-macが変えたのはここだ。VMの画面を、普段コマンドを打っているターミナルの中にそのまま表示する。使うのはGhostty、Kitty、iTerm2といった対応ターミナルアプリの画像表示機能だ。これにより、仮想Macの画面をウィンドウを切り替えずに確認できる(GitHub README、2026-11-07確認)。

READMEが示すセットアップの流れはこうなる。まずcurlでインストーラーを取得して実行し、起動用コマンドを使えるようにする。次にterminal-mac upを実行すると、Appleから最新のmacOSの復元イメージ(IPSW)がダウンロードされ、仮想Mac本体がインストール・起動する。初回だけ、仮想Mac側に入れる補助アプリ「TerminalMacGuest.app」に画面収録とアクセシビリティの権限を与える操作が要る。ここまで終えると、2回目以降はterminal-mac up defaultの1行で、前回と同じ仮想Macがターミナルの中に表示される。

コンテナではなく本物のMacが動く

ここで気になるのが、「ターミナルの中に表示される」というその仮想Macは、具体的に何が動いているのかという点だ。

Dockerコンテナを使ったことがある人なら、アプリだけを隔離する感覚はもう知っているはずだ。コンテナは、ホストのOSのカーネルを間借りしながら、プロセスやファイルシステムだけを分離する仕組みになる。てっきりterminal-macも、この延長で軽量な隔離環境を作るのだろうと自分は予想していた。

その予想は外れた。READMEは「Apple Virtualization runs a real macOS guest」(Apple Virtualizationが実際のmacOSゲストを動かす)と明記している。Appleが自社の仮想化フレームワークとして提供する機構を使い、OSそのものを丸ごと起動するという意味だ(GitHub README、2026-11-07確認)。

コンテナがホストのカーネルを間借りするのに対し、terminal-macが立ち上げるのは独立したmacOSそのものになる。ログイン画面から始まり、Finderもメニューバーも持つ、もう1台分のmacOSだ。エージェントは、そのMacの中で画面を操作する。

似た発想の機能は、AIコーディングエージェントのDevinにもある。9月に扱った記事で紹介したとおり、Devinはクラウド上に専用のMacを持ち、iPhone/macOSアプリの検証に使える。ただしこちらはCognition社のクラウド機能で、Devin専用になる。terminal-macは自分のローカルMacの上で動き、Claude Codeを含む任意のMCPクライアントから使える点が違う。

エージェントからは7つの操作で動かす

実際にエージェントへ操作を任せる仕組みは、MCP(Model Context Protocol)というエージェント向けの共通インターフェースに乗っている。terminal-macが提供するMCPツールは7つある。スクリーンショットの取得、クリック、ドラッグ、スクロール、文字入力、キー操作、状態確認だ(GitHub README、2026-11-07確認)。エージェントは、この7つの組み合わせだけで画面を見て判断し、次の操作を決めていく。

Claude Codeの場合、READMEが示す手順はシンプルだ。claude mcp add terminal-mac -- terminal-mac mcpを1行実行するだけで、この7つのツールが使えるようになる。あわせて、観察・操作・検証を繰り返す手順をエージェントに教える「スキル」も用意されており、terminal-mac skills installで導入できる。これらのツールは仮想Mac側のヘルパーアプリにだけ作用する。ホスト側のデスクトップには触れない、とREADMEは明記している。

applech2.comの記事によれば、開発者自身の投稿として、公開から1日でGitHubのスターが1,200に達したという。この数字はterminal-mac自身の指標ではなく開発者の発言にとどまるものの、「自分のMacを渡さずにエージェントへ操作を任せたい」という需要の大きさはうかがえる。

使う前に確認しておきたい条件

今のterminal-macを試すには、いくつか前提を満たす必要がある。

  • Apple Silicon搭載のMacで、macOSは14以降が必要になる。Intel Macでは動かない(GitHub README、2026-11-07確認)
  • 現状は「早期のリリース候補版」で、配布されているビルドは自己署名のみ。Appleの公証(notarization)は受けていない(GitHub README、2026-11-07確認)
  • 既定のネットワーク設定(NAT)では、仮想Mac側からホストやLAN上の他の機器に届く可能性がある。README自身が「敵対的なコードを隔離するための環境ではない」と明記しており、素性の分からないコードを実行させる用途には向かない(GitHub README、2026-11-07確認)

もう一つ、terminal-mac自体の制限ではなく、Apple側の仕組みに由来する注意点もある。Apple Siliconのソフトウェア使用許諾には、1台のホストで同時に起動できるmacOSの仮想マシンの数を制限する条項があるという。上限は2台で、これをMac専門メディアeclecticlight.coをはじめ複数のメディアが報じている。terminal-mac自身のREADMEにはこの点の明記がない。Apple公式ドキュメントの該当箇所も今回は直接確認できなかったため、ここでは断定を避ける。それでも、エージェント専用のMacを何台も並べて動かしたい場合は、この制限に先にぶつかる可能性がある。

まとめ

terminal-macは、AIエージェントに画面操作を任せる際の「自分のMacを直接触らせたくない」という迷いに、ターミナルの中で完結する選択肢を加えた。Apple純正の仮想化機構でmacOSを丸ごと起動するため、コンテナよりも隔離の度合いが強く、画面もウィンドウを切り替えずに確認できる。

ただし、現時点ではApple Silicon・macOS 14以降専用の早期リリース候補版だ。Apple公証を受けていないビルドである点、既定のネットワーク設定では完全な隔離環境にはならない点は、試す前に押さえておきたい。機密情報を扱う操作をいきなり任せるのではなく、まずは軽い検証作業から試すくらいの距離感が合っているはずだ。

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