トレイルの分岐で足を止めたことがある人は多いはずだ。腕のGPSウォッチが示すのは、あらかじめ読み込んだコースをなぞる点線だけ。自分がその線の上にいるのは分かっても、右と左のどちらが下り坂なのか、この先にトレイル名の看板があるのかまでは分からない。
COROSが2026年9月22日(米国)、24日(日本)に発売した「PACE 4 Pro」は、この前提を変えた製品だ。チタンベゼルとサファイアガラスを使い、道路名・トレイル名・等高線・主要ポイントまで表示するフル地図ナビを積む。それでいて重量はナイロンバンド装着時で43g、価格は69,960円(税込)に収まっている。同じ条件を満たしてきたGarminのフラッグシップ機より軽く、5万円以上安い。この軽さと安さの理由を、Garmin、そして同じCOROSの無印機と比べながら確かめていく。
地図ナビはなぜ重く高いのか
詳細な地図を表示するGPSウォッチは、これまでハイエンド機の専売特許に近かった。たとえばGarminの現行フラッグシップ「Forerunner 970」は、チタンベゼルとサファイアクリスタルを採用し、日本の詳細地形図をフルカラーで表示できる。本体重量は56g、価格は121,800円(税込、現金一括)だ(Garmin公式)。
地図データを保存して素早く描画するには、それなりのストレージと処理能力が要る。さらにチタンやサファイアガラスといった素材は軽量化にも限界がある。「地図ナビ・チタン・軽さ」は、これまで両立しにくい3条件だった。
PACE 4 Proは何を変えたのか
COROS PACE 4 Proは、この3条件を1台にまとめた。1.47インチAMOLED(466×466ドット、最大3,500nit)、TC4チタン合金ベゼル、サファイアガラス、32GBストレージを積む。本体重量はナイロンバンド装着時43g、シリコンバンド装着時51g。サイズは47.6×47.6×11.8mm、日本での小売価格は69,960円(税込)だ(COROS公式プレスリリース)。
チタン・サファイア・地図ナビという組み合わせを、COROSはGarminのフラッグシップ機より13g軽く、51,840円安く実現した。
3製品を並べると、Pro機はGarminのフラッグシップより13g軽いだけでなく、無印PACE 4より11g重いだけで済んでいる。地図なしの無印機からたった11gの上乗せでチタンとサファイアが手に入るなら、悪くない話に見える。ただし「地図なしの無印機」というこの前提自体を、次で確かめる(COROS公式、Garmin公式)。
地図機能自体は無印にも無償で届いていた
「Pro」という名前から、フル地図ナビはこの新型だけの機能だと思い込んで調べ始めた。実際には3週間前の2026年9月4日付のファームウェア更新で、32gの無印「PACE 4」にもすでに配られていた(DC Rainmaker)。
ではPro機は何のために存在するのか。答えはストレージと画面にある。無印PACE 4のストレージは4GBで、システムなどにすでに2.3GBほど使われているため、地図データに回せる実質容量は1.7GB程度しかない。海外レビューサイトの実測では、地図データはドイツ全域で約1.1GB、カリフォルニア州で約330MBという大きさになる(DC Rainmaker)。無印機では、走る予定の地域ごとにタイルを選んで入れ替える運用になる。
Pro機の32GBは、この入れ替えの手間をほぼ気にしなくていい容量だ。画面も、無印の1.2インチ(390×390、最大1,500nit)からPro機の1.47インチ(466×466、最大3,500nit)へと大きくなった。輝度は2倍以上になり、直射日光の下でも地図の等高線や地名を読み取りやすい。
Pro機が上乗せしたのは地図機能そのものではなく、地図を広い範囲でまとめて持てるストレージの余裕と、屋外でも見やすい画面だ。
| 項目 | COROS PACE 4(無印) | COROS PACE 4 Pro | Garmin Forerunner 970 |
|---|---|---|---|
| 重量 | 32g(ナイロン) | 43g(ナイロン)/51g(シリコン) | 56g |
| ディスプレイ | 1.2インチ・390×390・最大1,500nit | 1.47インチ・466×466・最大3,500nit | 1.4インチ・454×454 |
| ストレージ | 4GB(地図に回せる実質約1.7GB) | 32GB | 非公表(フルカラー地形図プリインストール) |
| ベゼル・ガラス | ポリマー系 | TC4チタン合金・サファイアガラス | チタン・サファイアクリスタル |
| 地図ナビ | 2026-09-04の更新で対応(タイル選択式) | 対応(32GBでまとめて保存) | 対応(日本詳細地形図プリインストール) |
表の重量とストレージの差から分かるとおり、無印とProの分かれ目は「地図が使えるかどうか」ではなく「地図をどれだけ気楽に持ち歩けるか」にある。
向く人・向かない人
- 向く人: 複数の県境をまたぐトレイルやウルトラレースを走り、地図タイルの入れ替えを気にせず広い範囲をまとめて持っておきたい人。直射日光下での視認性を重視する人
- 向く人: すでにGarminのチタン+サファイア機を検討していて、価格と重量をもう少し抑えたい人
- 向かない人: ロード中心で走行範囲がほぼ固定されている人。無印PACE 4のタイル入れ替えで十分間に合い、32gという軽さを優先したほうがよい
- 向かない人: サードパーティ製アプリや通信キャリアのeSIM連携を求める人。COROSにはGarminのConnect IQのようなアプリストアはない
まとめ
COROS PACE 4 Proは、チタンベゼル・サファイアガラス・フル地図ナビという組み合わせを43g・69,960円で実現した。これまでGarminのフラッグシップ機が前提だった組み合わせだ。Garmin Forerunner 970(56g・121,800円)と比べると13g軽く、51,840円安い。
ただし地図機能自体は、2026年9月4日の更新で32gの無印PACE 4にもすでに無償で届いている。Pro機が実際に上乗せしたのは、地図データを気にせず広い範囲でまとめて持てる32GBのストレージと、直射日光下でも見やすい最大3,500nitの画面だ。走る範囲が広く、複数地域の地図を切り替えずに持ち歩きたい人ほど、この上乗せ分の価値が大きくなる。
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