機種変更したあと、電源の入らなくなった古いスマホを引き出しにしまったままにしていないだろうか。ハイレゾ対応をうたうUSB DACを買って古いスマホにつないでみたものの、「192kHzのはずなのに、普通の音源と大して変わらない」と感じた経験がある人もいるかもしれない。
その原因と答えを、無料アプリ「reTONE(リトーン)」が示している。Androidが内部で音を変換してしまう仕組みを回避し、古いスマホでもFLACの192kHz/24bitやDSDをそのままUSB DACへ送る専用機に変える(reTONE公式サイト)。今日2026年11月4日、開発元の飯田ピアノがGoogle Playでの配布を始めたと公式サイトで告知した(reTONE公式サイト release.html)。
気になるのは、具体的に何を変えているのかと、どこまで古い機種で使えるのかだ。
標準の再生アプリでは何が足りないのか
ハイレゾ対応のDACをつないでも、思ったほど音が変わらないのはなぜか。理由は、Android自体が持つ標準の音声経路にある。ハイレゾ音源の魅力は、CDより高いサンプリングレートやビット深度に情報が残っていることにある。ところがAndroidでは、複数のアプリの音をまとめて1つの出力レートに変換してから鳴らす仕組みが標準で動いている。この変換の品質は端末ごとに違い、端末の負荷が高いときは品質が落ちることもある。16bit出力までしか対応しない端末では、24bitの音源はその時点で切り詰められてしまう(reTONE公式サイト technical.html)。
つまり、ハイレゾ対応のDACを用意しても、Android標準の再生アプリを使う限り、音源が持っている情報をそのまま渡しきれないことがある。これが「192kHzのはずなのに変わらない」と感じる理由にあたる。
reTONEは、この変換の手間そのものを減らすことで答える。
reTONEは何を変えたのか
reTONEは独自の再生エンジンを持ち、FLACを192kHz/24bitのまま、Androidの標準の音声経路(ミキサーと変換処理)を通さずにUSB DACへ送る(AV Watch)。変換がどうしても必要な場面でも、エンジン側で一度だけ変換する。端末の出力レートぴったりに渡す設計になっている(reTONE公式サイト technical.html)。
出力先がネイティブDSD対応のUSB DACであれば、Android標準では再生できないDSD(DSF/DFF、DSD64〜256)もそのまま送れる。対応している内容を公式サイトからまとめると、次のとおりだ(reTONE公式サイト)。
- 再生形式: MP3・AACなど標準形式に加え、FLAC・WAV・AIFF・ALAC(ハイレゾ含む)・DSD(DSF/DFF、DSD64〜256)
- 出力先: イヤホン・スピーカー・Bluetooth・USB DAC(USB Audio Class 2による直接出力)
- 価格・個人情報: 無料、広告なし、利用者の情報も収集しない
音質を左右する変換フィルターの設計値も公式サイトで公開されている。通過域は20kHzまで平坦(設計値で±0.001dB未満)、出力時の減衰目標はfloat出力で120dB、16bit出力で100dBとされている(reTONE公式サイト technical.html)。
ここまでは「新しいスマホなら動きそうだ」という話に聞こえるかもしれない。ところが公式サイトが挙げている動作確認済み端末の一覧を見ると、話はもっと古い機種にまで及んでいる。
どれくらい古い機種まで動くのか
reTONEの対応はAndroid 4.0以降、ARM(32bit・64bit)で、root化やカスタムROMは不要とされる(reTONE公式サイト)。公式の動作確認端末一覧の中から、発売時期の幅が分かる例を挙げると、次のようになる(phileweb、reTONE公式サイト technical.html)。
| 端末 | Androidバージョン | 確認された内容 |
|---|---|---|
| Xperia P(2012年発売) | 4.1.2 | 2コアCPUでPCM 192kHz/24bitとDSD64の再生を確認 |
| Galaxy S8 | 9 | USB DAC(Hidizs S9 Pro)への出力を確認 |
| Pixel 3 XL | 12 | 動作を確認 |
| Galaxy Z Fold5 | 16 | 動作を確認 |
自分はここで二度見した。ハイレゾやDSDの再生には、それなりに新しいハードウェアか、専用のデジタルオーディオプレーヤーが要るものだと思い込んでいた。表の一番古いXperia Pは発売から14年近く経つ機種で、積んでいるCPUもコア数2の非力なものだ。それでもビットパーフェクトな再生ができてしまうのは、Android標準の仕組みより軽い処理で済ませているということでもある。古いスマホが「非力だから無理」ではなく、「無駄な変換をしていないから動く」側に回っている。
この動作実績が示しているのは、処理性能よりもソフトウェア側の設計が音質を左右する場面があるということだ。とはいえ、動けばどんな組み合わせでも安心というわけではない。
USB DAC接続には、端末とDACの組み合わせによる相性がある。公式の確認では、Galaxy S8とHidizs S9 Pro(バスパワー駆動)の組み合わせは動作した。一方でXperia PとHidizs S9 Proは端末側の給電不足でDACを認識せず、URBANO L03はUSB OTGのホスト動作に対応していないため使えなかった(reTONE公式サイト technical.html)。手元の端末とDACで試す前に、公式サイトの動作確認端末一覧で近い機種の実績を確認しておくとよい。古い端末を引っ張り出す場合は、内蔵バッテリーの劣化にも注意が必要だ(BCN Retail)。
ここまでの仕組みと実績が分かったところで、残るのは「今日から何が変わったのか」だ。
今日から何が変わったのか
reTONEは2026年10月23日に公式サイトでベータ版として公開され、10月26日時点でダウンロード数は1万回を超えていた(BCN Retail)。当初は11月7日の「秋のヘッドフォン祭 2026」での発表を予定していたが、10月のポタフェス大阪での試作展示の反響を受けて前倒しで公開したという(BCN Retail)。この時点ではAPKファイルを公式サイトから直接ダウンロードし、「提供元不明のアプリ」を許可してインストールする必要があった。
そして今日11月4日、公式サイトに「Google Playで公開しました。」という告知が出た(reTONE公式サイト release.html)。Google Playが使える端末なら、ストアアプリから検索してそのままインストールできるようになった。Playストアが使えない古い端末向けには、引き続きAPKでの配布も続けている(reTONE公式サイト)。APKの手動インストールは、セキュリティソフトの警告やインストール許可の設定変更が必要で、慣れていない人には一段ハードルが高かった。そのハードルが、新しめの端末では無くなったことになる。
なお、最新版(v0.92.10)は公式の表記でも「ベータ」にとどまる。10月23日の最初の公開から今日までの2週間ほどで複数回の更新が重ねられており、まだ機能や挙動が変わっていく段階にある(reTONE公式サイト release.html)。
まとめ
reTONEは、Androidが標準で行っている音声変換の手間を減らすことで、古いスマホでもFLACの192kHz/24bitやDSDをUSB DACへそのまま送れる専用機に変える無料アプリだ。2012年発売の2コアCPU機種でも動作が確認されており、非力な端末だからといって諦める必要はない。今日からはGoogle Playでも配布が始まり、新しめの端末ならAPKの手動インストールなしで導入できる。
試す前には、公式サイトの動作確認端末一覧で自分の端末やUSB DACに近い組み合わせの実績を確認しておきたい。給電不足やOTG非対応で動かない組み合わせもあり、現在のバージョンはまだベータの段階にある。引き出しの奥で眠っている古いスマホがあるなら、まずはGoogle Playで検索してみる価値がある。
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