機種変更の画面で、LINEに登録したメールアドレスとパスワードを入力しようとして、手が止まった経験はないだろうか。パスワードを忘れていたり、短すぎると拒否されたり、電話番号あてのSMS認証コードが届くのを待たされたりする。2026年11月5日、iPhone/iPad版LINEがバージョン26.17.0へ更新され、この場面がパスワードなしで済むようになった。顔認証か指紋認証をするだけで、新しい端末へアカウントを引き継げる「パスキー」に対応したためだ。パスキーは何を変えているのか。使うには、機種変更の前に何をしておけばいいのか。
機種変更の引き継ぎがパスキー対応に
今回の変更は、App StoreのLINEアプリのページで確認できる。現在のバージョンは26.17.0で、「新機能」の欄に「アカウント引き継ぎ時にパスワードを使わず、顔認証や指紋認証でスムーズにログインできる「パスキー」に対応。」と明記されている。App Storeで2026-11-06に確認した。今回確認できたのはiPhone/iPad版の新機能欄で、Android版がいつからこの機能に対応したのかはGoogle Play公式ページで確認できていない。公式ヘルプの手順にはAndroid端末での操作も書かれているため、少なくとも手順としては用意されている。
これまでのLINEの機種変更は、次のいずれかが前提だった。
- 電話番号あてのSMS認証コード
- 登録したメールアドレスとパスワード
LINEヘルプセンターの「引き継ぎの方法」カテゴリを見ると、その前提がよく分かる。「電話番号でLINEアカウントを引き継ぐには?」「異なる電話番号でLINEアカウントを引き継ぐには?」といった項目が並んでいるのだ。電話番号が変わる機種変更では、別の手順が要ったことがこの並び方からも読み取れる。
LINEを運営するLY Corporationは、別のアカウント基盤であるYahoo! JAPAN IDでもパスキーへの移行を進めている。2026年4月16日、ログイン方法をパスキーへ一本化する方針を発表した。2027年春頃までに「パスワードのみでのログイン」を終了する予定だとしている(報道記事経由で確認。この発表はYahoo! JAPAN IDについてのもので、LINEアプリ本体への言及はない)。同じグループの中で、パスワード以外のログイン手段への移行が広がっている。パスキーは、この面倒をどう解決しているのだろうか。
パスキーはパスワードと何が違うのか
まず、パスワードが引き継ぎでどう使われてきたかを思い出したい。入力した文字列は、LINEのサーバー側に登録された値と照合するために送られる。文字列そのものが「正しいかどうかの判定材料」としてサーバーへ渡る点は、パスワード方式に共通する弱点だ。使い回していれば他のサービスの漏洩が波及するし、偽の入力画面を用意されれば盗まれる。
パスキーでは、この渡し方自体が変わる。パスキーは公開鍵暗号にもとづく認証方式だ。LINEヘルプセンター「パスキーとは?」によると、秘密鍵は端末の中にだけ保存され、LINEのサーバーには公開鍵だけが登録される。ログイン時は、顔認証や指紋認証で端末のロックを解除し、その端末内の秘密鍵を使って「自分がその鍵を持っている」ことを証明する。生体情報そのものも、秘密鍵そのものも、サーバーには送られない。つまりパスキーでは、盗まれて困るもの(秘密鍵)が、そもそも端末の外に出ない。
パスキーの登録には、同ヘルプページによる条件がいくつかある。
- 同じApple IDまたはGoogleアカウントでサインインした端末どうしで同期される
- 1つのLINEアカウントに登録できるパスキーは最大10個まで
- 1つの端末に登録できるパスキーは1つだけ
- 設定には、LINEアカウントへのメールアドレス登録が前提になる
では、このパスキーを機種変更でどう使えばいいのだろうか。
使うには機種変更前の登録が要る
パスキーを機種変更の引き継ぎに使うには、今使っている端末であらかじめ作成しておく必要がある。新しい端末を用意してから作ろうとしても間に合わない。LINEヘルプセンター「パスキーで引き継ぐには?」が案内する手順は次のとおりだ。
- 今使っている端末でLINEを開き、「設定」→「アカウント」→「パスキー」を開く
- 「パスキーを作成」をタップし、画面の指示に従って顔認証または指紋認証を登録する
- 機種変更の際、新しい端末でLINEを起動して「ログイン」をタップし、「その他の方法でログイン」から「パスキーでログイン」を選ぶ
パスキーは、端末を紛失したり手放したりしたあとに新規作成する手段ではない。旧端末が手元にあり、ログインできるうちに登録しておく必要がある。この手順は、どんな機種変更でも同じなのだろうか。
同じOS間と違うOS間で話が変わる
実はここで、機種変更のパターンによって必要な準備が分かれる。公式ヘルプが示す対応は次のように変わる。
| 機種変更のパターン | 新しい端末で必要なこと |
|---|---|
| iPhoneからiPhone、またはAndroidからAndroid | 以前の端末と同じApple IDまたはGoogleアカウントで、新しい端末にサインインしておく |
| iPhoneとAndroidをまたぐ機種変更 | パスキーそのものの移行が必要。移行の手順は端末メーカーのサイトで確認するか、メーカーに問い合わせる |
同じOS同士なら、新端末に普段どおりサインインしておくだけでパスキーは引き継がれる。一方でiPhoneとAndroidをまたぐと、公式ヘルプには、ここから先の手順が書かれていない。移行の確認は端末メーカーのサイトやサポート窓口に委ねられている。
自分はこの案内の切れ方に驚いた。パスキーは生体認証という最新の仕組みなのに、OSをまたいだ瞬間、LINE一社だけでは完結しない。秘密鍵を端末の外に出さない設計が、そのまま「端末を替えるときはパスキーも移行しなければならない」という制約に直結している。
まとめ
2026年11月5日のアップデートで、iPhone/iPad版LINEは機種変更時のアカウント引き継ぎをパスワードなしで完了できるようになった。パスキーは秘密鍵を端末内に留めたまま生体認証で本人確認する仕組みで、サーバーに渡るのは公開鍵だけだ。使うには、今の端末が手元にあるうちに「設定」→「アカウント」→「パスキー」から作成しておく必要がある。
次に機種変更するとき、同じOS同士ならそのまま引き継げるが、iPhoneとAndroidをまたぐ場合はパスキーの移行という別の手順が挟まる。Android版がいつからこの機能に対応したのかは確認できていないが、公式ヘルプの手順にはAndroid端末での操作もすでに書かれている。
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