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AIが書いた日本語を、文の骨格から直すスキル「yomiyasu」

オープンソースのAgent Skill「yomiyasu」は、AIが書く日本語の不自然さを、禁止語の言い換えでなく「誰が何をしたか」という文の骨格から直す。Claude CodeやCursorに無料で追加できる。

赤いペンを持った手が、タイプライターの横で原稿に書き込みをしている

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Ron Lach on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

AIに下書きを書かせたあと、「言いたいことは合っているのに、なぜか読みにくい」と感じて自分で手直ししたことはないだろうか。どこが変なのか言葉にできないまま、「手触り」や「解像度」といった単語をいくつか削って終わらせている人も多いはずだ。

2026年10月1日、個人開発者の大賀愛一郎氏が、AIの書いた日本語を書き直させられる追加機能を無料で公開した。Claude Code・Cursor・Codexなど、ふだん使っているAIコーディング環境に読み込ませるだけで動く。こうした追加機能は「Agent Skill」と呼ばれ、今回公開されたのは「yomiyasu(よみやす)」という名前のスキルだ。MITライセンスで、GitHub公式リポジトリから入手できる。単語を言い換えるのではなく、「誰が何をしたか」という文の骨格そのものから直す設計だという。何がどう変わるのかを、公式リポジトリの中身から確かめた。

なぜ禁止語を削るだけでは直らないのか

AIが書く日本語には、独特の癖が残りやすい。yomiyasuのREADMEは、これまでのAI臭さ対策が抱えていた限界を4つ整理している。禁止語を置き換えても別の曖昧な語に逃げるだけだったこと、編集ルールを与えすぎるとかえって大げさな文体を招いたこと。この記事で取り上げるのは3つ目の限界だ。「誰が何をどうするのか」が省略されたまま、概念や道具が「壊れる」「倒す」「効く」のような比喩的な動詞と結びついてしまう問題である。

試しに、同じREADMEが載せている例を見てみる。デザインシステムの導入メリットを説明した、素のLLM出力だ。

従来の開発では、画面ごとに手触り感を探りながらパーツを作っていました。しかし、片方だけを見て画面を作ると、もう片方のアクセシビリティが静かに壊れます。そこでデザインシステムという強固な土台を置くことで、開発者の解像度が一段上がります。

「手触り感」「解像度」を禁止語リストで弾いても、残るのは「静かに壊れます」のような比喩だ。自分には、英語の”silently fail”をそのまま日本語に移したような言い回しに読めた。主語が「アクセシビリティ」という抽象的な性質になっており、誰が何に気づき、何をした結果アクセシビリティが損なわれるのか、この1文には書かれていない。読者は書かれていない部分を自分で補いながら読むことになる。

yomiyasuをこの文章に適用すると、次のようになる(評価データより、公式の検証例)。

各コンポーネントの見た目やアクセシビリティ要件があらかじめ定義されていれば、デザイナーと開発者はコードの記述や画面遷移の実装を円滑に進められます。スタイルの指定に迷った場合でも、定義済みの標準コンポーネントを選択すれば表示の不整合を防ぐことが可能です。

変わったのは、個々の単語ではない。「アクセシビリティが静かに壊れる」という主語のない比喩が、別の文に置き換わっている。「定義済みの標準コンポーネントを選択すれば表示の不整合を防げる」という、誰が何をすればどうなるかの分かる文だ。yomiyasuはこの書き換えを、SVOCM(動作主・対象・動作などの文の骨格)の復元、非生物主語の解体、比喩動詞の操作化など、7つの変換原則として整理している。

  • SVOCMの完全復元: 曖昧な指示代名詞(「これ」「片方」)を具体的な名詞に戻す
  • 動作主と働きかけの明確化: 読者への指示は「〜してください」、機能説明は「〜できます」と役割を分ける
  • 非生物主語の解体: 概念や道具が意思を持つような表現を、人間やシステムの動作に書き換える
  • 比喩動詞の技術的操作化: 「壊れる」「倒す」「効く」「溶かす」「潰す」を、直接的な操作や状態変化に置き換える
  • 不要な前置きと否定対比の肯定化: 「重要なのは」のような前置きや、「AではなくB」の回りくどい対比を削る
  • 意味保持と不要な情報増補の防止: 原文の数値や制約は残し、存在しない主体や一般論を足さない
  • 文長と読点・装飾の抑制: 1文あたり30〜45字程度を目安に、絵文字や過剰な太字を削る

単語の禁止では直せなかったのは、問題が語彙ではなく文の構造にあったからだ。では、この書き換えで本当に文章は読みやすくなっているのか。感覚ではなく、確かめる方法はあるのか。

書き換えの効果はどう確かめられるのか

yomiyasuには、yomiyasu_lint.pyという検査スクリプトが同梱されている(ソースコードを直接確認)。外部ライブラリに依存せず、Python標準ライブラリだけで動く。このスクリプトは、文章を100点満点から減点方式で採点する。「静かに壊れる」「黙って無視」のような比喩動詞パターンや、「手触り」「解像度」のような語彙リストに引っかかると5点減点される。太字の使用頻度(1,000字あたり3.0個超)や箇条書きの比率(25%超)が高すぎる場合も、同じく減点の対象になる。この太字・箇条書きの基準は、AI普及後の技術記事でこの2つが急増したと示したQiita記事7万件の実測調査を根拠にしていると、READMEの謝辞に明記されている。

このスクリプトを使い、作者自身が検証データを公開している(comparison_benchmark.md)。人間の原文・素のLLM出力・yomiyasu適用後の3つを比較したものだ。先ほどのデザインシステムの例(セットA)のスコアは次のとおりだった。

050100点人間が書いた原文: 95素のLLM出力: 33yomiyasu適用後: 1009533100人間が書いた原文素のLLM出力yomiyasu適用後

素のLLM出力は33点まで落ち込んでいる。太字が1,000字あたり20.1個(警告基準は3.0個超)、箇条書きの比率が42.9%(警告基準は25%超)に達していた。比喩動詞も「静かに壊れる」「倒す」「効く」「溶かす」の4種類が検出されている。yomiyasu適用後はこれらの指摘がすべて消え、100点になっている。もう1つの検証例(非同期処理のエラーハンドリングを説明する技術記事)でも、素のLLM出力の65点がyomiyasu適用後は100点まで改善している。1つの例に限った話ではないことが分かる。

自分がここで少し意外に感じたのは、セットAで人間の原文(95点)よりyomiyasu適用後(100点)のほうがスコアが高い点だ。理由を確認すると、人間の原文は文末の「〜向上します」「〜繋がります」が3回連続し、文末のリズムを揃えるルールで5点減点されていた。比喩やスロップ語彙が混じっていたわけではない。この検証はオープンライセンスの文章2件について、静的な指標の変化を示したものだ。 あらゆる文章の読みやすさや正確性を保証するものではないと、作者自身も注記している。スコアが高いことと、文章として優れていることは別の話だと捉えたほうがよい。

スコアが跳ね上がる仕組みも見えてきた。では、この検査スクリプトが、実際の書き換えまでしているのだろうか。

lintスクリプトと書き換えは別の仕組み

ここには誤解しやすい点が一つある。yomiyasu_lint.pyが行っているのは、固定の語彙リストと正規表現パターンに文章が引っかかるかどうかの機械的なチェックだけだ。「静かに壊れる」「黙って無視」のような特定の言い回しを検出し、点数を出す。この記事の冒頭で説明した、SVOCMの復元や非生物主語の解体といった、文の骨格そのものの書き換えは別の主体が担う。lintスクリプトではなく、Agent Skillの指示を読んだAIモデル自身が行う。lintスクリプトは、その結果を数値で確かめるための別の軽量ツールという役割分担になっている。

この2段構えにより、書き換え自体はAIモデルの文章理解力に任せつつ、太字の頻度や特定の比喩表現のような機械的に数えられる部分は、同じ基準で繰り返し検査できる。CI(継続的インテグレーション)やGitフックに組み込む使い方も用意されている。READMEの--strictオプション(警告が1件でもあれば終了コード1を返す)を使えばよい。

書き換えの原理も、確かめ方も分かった。あとは、自分の環境でどう動かすかだ。

自分の環境でどう使うか

READMEによれば、インストール方法は環境に応じて4通りある。

  1. npx skills add nanaism/yomiyasu(Claude Codeなど向け、推奨)
  2. npx openskills install nanaism/yomiyasu に続けて npx openskills sync(Cursor・Codexなど向け)
  3. /plugin marketplace add nanaism/yomiyasu に続けて /plugin install yomiyasu@yomiyasu(Claude Codeのプラグインとして)
  4. Releasesからyomiyasu.skillをダウンロードし、エージェントのスキルディレクトリに手動で配置

使うときは、AIチャットやコーディングエージェントに下書きを貼り付けて「この文章を読みやすくして」と指示するだけでよい。技術記事・業務文書・エッセイの3つのドメインを指定することもできる。業務文書(business)なら比喩表現を排して責任の所在を明確にする方向、エッセイ(essay)なら大げさな教訓化を避けて素直な実感を残す方向に調整されるという。ドメインを省略すると、入力内容から自動で判別される。

1点、使ってみる前に知っておきたい注意もある。READMEは、文体調整や文章校正を目的とした他のAgent Skillを同時に有効化していると、指示が競合して意図しない出力になるおそれがあると明記している。すでに類似のスキルを入れている場合は、一時的に無効化してから試すほうがよい。

まとめ

  • yomiyasuは、AIが書いた日本語の不自然さを、禁止語の言い換えではなく「誰が何をしたか」という文の骨格から直すAgent Skillとして2026年10月1日に公開された。MITライセンスで無料、Claude Code・Cursor・Codexなどに追加できる
  • 素のLLM出力にありがちな「静かに壊れる」のような比喩動詞や非生物主語を、SVOCMの復元を軸にした7つの変換原則で書き換える
  • 同梱の検査スクリプトyomiyasu_lint.pyによる作者自身の検証では、素のLLM出力の33点・65点が、適用後はいずれも100点まで改善した。書き換え自体はAIモデルが行い、lintスクリプトはその結果を数値で確かめる別の仕組みという役割分担になっている
  • npx skills add nanaism/yomiyasuなどのコマンド1つで導入でき、技術記事・業務文書・エッセイのドメインを指定して使い分けられる

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