台所でレシピ動画を見ながら調理していると、濡れた手や油のついた指でタブレットの画面に触れてしまうことがある。お風呂で動画を見ていて、湯気と水しぶきの近くに置きっぱなしにしている人もいるだろう。iPhoneなら少しの水がかかっても平気だと知っているが、iPadも同じ感覚で扱っていいのか、迷ったまま使っている人は多いはずだ。
Appleは2026年10月26日、新型iPad miniを発表した。Appleのタブレットとして初めて、IP67等級の防水・防塵性能を備えた。
このIP67という等級は、具体的にどこまでの水に耐えるという意味なのか。そしてなぜ、iPhoneでは10年前からあった防水が、iPadにはこれまで一度も無かったのか。
IP67が保証する範囲
IP67は、国際電気標準会議(IEC)が定めるIEC規格60529にもとづく等級表記だ。アルファベットのIPに続く2つの数字が、それぞれ防塵と防水の性能を表す。
| 桁 | 意味 | 新型iPad miniの等級 |
|---|---|---|
| 1桁目 | 防塵の等級(0〜6段階) | 6(粉じんの侵入を完全に防ぐ最高位) |
| 2桁目 | 防水の等級(0〜9段階) | 7(水深1mに最長30分沈めても浸水しない) |
Apple公式の技術仕様ページには、「IEC規格60529にもとづくIP67等級に適合しています」とある。テストは「実験室の管理された条件下」で行われたと脚注に明記されている。Apple公式「iPad mini - 技術仕様」
つまり、水道の水がかかる程度なら耐えるが、風呂に沈めたり、海やプールで使ったりすることまで保証する等級ではない。防沫・耐水・防塵性能は通常の使用によって低下する可能性があり、水濡れによる損傷は保証の対象外になるとも書かれている。Apple Newsroomの発表文
ただし、この等級がiPadに付くこと自体が、これまでのApple製品では珍しかった。
iPhoneとの10年差
新型iPad miniより前に、Appleのタブレットが防水等級を持ったことは一度もない。現行のiPad Pro・iPad Air、そして直前世代のiPad mini(A17 Pro、2024年発売)の公式技術仕様ページを確認した。いずれにも耐水性能の項目は無い。iPad Pro・iPad Air・iPad mini(A17 Pro)
| 製品 | 発売年 | 耐水等級 |
|---|---|---|
| iPhone 7 / 7 Plus | 2016年 | IP67(Appleで最初に対応) |
| iPad Pro(現行) | — | 記載なし |
| iPad Air(現行) | — | 記載なし |
| iPad mini(A17 Pro) | 2024年 | 記載なし |
| iPad mini(A20 Pro、新型) | 2026年 | IP67 |
iPhoneが初めてIP67に対応したのは、2016年発売のiPhone 7・7 Plusだった。Apple公式サポート「iPhoneの防沫性能、耐水性能、防塵性能について」
自分はここで一度止まった。同じApple製品で、同じようにタッチパネルやスピーカー、充電端子を持っている。iPhoneより先にiPadが水に強くなっていてもおかしくないと思っていたからだ。
では、今回はどうやってこの等級を実現したのか。
密閉型スピーカーの効果
新型iPad miniは、新しい音響設計「Acoustic Display」を採用した。次の3つの要素で構成される。
- ディスプレイと連係する専用ウーファーが、低音と音量を受け持つ
- ガラスとアルミニウムの筐体の間に収めたカスタムツイーターが、高音を受け持つ
- この構成全体が、密閉された筐体になっている
Apple公式は、「Acoustic Displayでは密閉された筐体を採用している」と説明する。そして「iPad miniがIP67等級の基準を満たすのに役立っています」とも述べている。Apple Newsroomの発表文
音質を上げるための設計変更が、水への強さも連れてきた、という組み合わせになっている。
密閉度を上げるなら、本体はそのぶん厚く重くなりそうなものだが、実際には逆だった。直前世代のiPad mini(A17 Pro)は厚さ6.3mm・重さ293g(Wi-Fiモデル)だった。新型は厚さ5.4mm・重さ255g(Wi-Fiモデル)まで薄く軽くなっている。iPad mini(A17 Pro)の仕様・新型iPad miniの仕様
性能そのものは分かったが、他のタブレットと比べてどうなのか、気になるところだ。
気になる点
数値だけで比べると、新型iPad miniが最高水準というわけではない。SamsungのGalaxy Tab S10シリーズは、本体とSペンの両方がIP68等級(防塵、淡水1.5mまで30分)に対応する。Samsung公式サポートページがそう説明している。Galaxy Tab S10シリーズの耐久性
水深1mのiPad miniより、水深1.5mのGalaxy Tab S10のほうが数値上は上になる。新型iPad miniが達成したのは「Appleのタブレットとして初めて」であって、タブレット全体の最高水準ではない。
買う前に確認したい点は次のとおり。
- 防水性能を最優先でタブレットを選びたい人は、Galaxy Tab S10シリーズ(IP68)のほうが数値上は上回る
- 日常的に水に浸けて使うことを前提にはできない。通常の使用で耐性が低下しうる点は前の節のとおりだ
- 今すぐ欲しい人は待つ必要がある。日本での予約受付は2026年10月29日開始、発売は11月6日から
まとめ
新型iPad miniは、Appleのタブレットとして初めてIP67等級の防水・防塵性能を備えた。水深1mに最長30分沈めても耐える水準で、密閉型の新しい音響設計「Acoustic Display」がその実現を支えている。耐水性能を加えながら、厚さ・重さはむしろ直前世代より薄く軽くなった。
iPhoneが2016年に獲得した防水性能に、iPadは10年遅れて追いついたことになる。日本での予約受付は2026年10月29日開始、発売は11月6日。価格はWi-Fiモデルが119,800円(税込)から、Wi-Fi+Cellularモデルが144,800円(税込)から。いずれも2026年10月26日にApple公式サイトで確認した。
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