たとえば0対8まで離された試合。チャットに「ff?」と流れ、投票の窓が開く。League of LegendsやVALORANTを遊んでいれば、あの場面の空気を知っているはずだ。逆に、まだやれると思っているのに投了を迫られて、うんざりした覚えもあるだろう。
同じ場面を別のゲームで探すと、話が変わる。投了に必要な賛成はLeagueが8割、VALORANTの競技戦は10割。Dota 2は5人で組んで潜った試合に投了を用意し、Overwatch 2は抜けた枠を補充して試合を続ける。
この違いは偶然ではない。各社は「負けが見えた試合を、誰の判断で終えるか」に別の答えを出していて、その理由を自分の言葉で書いている会社もある。まず、いちばん軽い条件から順に見ていく。4人が諦めれば終われるゲームは、なぜそこまで軽くしたのか。
5人中4人の賛成で投了できる
4人が投了に賛成すれば、残り1人が反対しても試合は終わる。この軽さはどこから来たのか。
Leagueは2023年に条件を緩めた
Leagueの投了は、2023年2月のPatch 13.3で大きく変わった。それまで20分より前の投了は全員一致が必要だった。Patch 13.3で、Blind PickとNormal Draftの通常投了が15分から呼びかけられるようになった。条件は5人中4人、またはチームの70%以上の賛成で、早期の全員一致投了は撤廃された(Riot Games公式パッチノート、NME)。2か月後のPatch 13.7で、同じ条件がランクのソロ/デュオとフレックスにも広がった(Riot Games公式パッチノート)。
理由をRiotはパッチノートに書いている。5人中4人の早期投了が否決された試合は、データ上、逆転率が低い。4人が同じ見立てなら、チームはどの試合を勝てるかをおおむね正しく判断している、という趣旨だ(Patch 13.3)。ランクへ広げたPatch 13.7では、通常戦で試した結果として投了がわずかに増え、平均試合時間がわずかに短くなったことを挙げている。そのうえで「どの試合をやり切るかを、チームがもっと自分で選べるようにする」と締めた(Patch 13.7)。
VALORANTは次の試合探しを早めた
VALORANTも2020年7月のPatch 1.03で、通常戦(Unrated)の投了条件を100%から80%へ下げた。呼びかけ可能なラウンドも8から5へ早めている(Riot Games公式パッチノート)。パッチノートの説明文は、投了を「次を早く見つける」ための手段として書いている。
通常戦は競技戦より軽い場として作ってあり、順位が懸かっていない。チームの大多数(80%)が投了を望むなら、その試合から降りて、より公平な戦いを早く見つけられるようにした(Riot Games、VALORANT Patch 1.03。訳は筆者)
Riotは2つのゲームのどちらでも、投了を「早く諦めること」より「次の試合へ早く移ること」に近い言葉で説明している。投了を増やす調整を、試合時間が短くなった実績と一緒に肯定的に書いている点が面白い。では順位が懸かる試合でも、同じ軽さで終われるのか。
VALORANT競技戦は全員の賛成で投了
同じVALORANTでも、競技戦(Competitive)では投了に5人全員の賛成が要る。Patch 1.03は通常戦だけを80%に下げ、競技戦は100%のまま据え置いた(Riot Games公式パッチノート)。
理由も同じ場所に書いてある。投了すると、消化していないラウンドはすべて敗北として順位の計算に入る。だから「順位に悪い影響が出る決定を下す前に、チームが完全に合意していることを確かめたい」と説明している。順位が動く試合では、1人の「まだやれる」が4人の「もう無理」に勝つ。落ちたレートがどこまで守られるかは、ランクシールドの記事で扱った。
つまり必要な賛成は「8割」と「10割」の2種類に分かれ、同じ会社が同じゲームの中で、順位が懸かるかどうかで使い分けている。ここまでの3つにDota 2を足し、5人のうち何人の賛成が要るかで並べると次の図になる。
LeagueとVALORANT通常戦は5人中4人で、1人分が空いている。VALORANT競技戦とDota 2は5人全員が埋まり、空きが無い(出典は各パッチノートとValve公式)。必要な人数だけを見れば、Dota 2はVALORANT競技戦と同じだ。だがDota 2の5人にだけ囲みが付いている。この囲みが、Dota 2の投了の設計を読み解く入口になる。
Dota 2は5人パーティに投了を渡す
Dota 2の投了も、VALORANTの競技戦と同じ全員一致だ。違いは、投票に参加できる人の決め方にある。
ランクの5人パーティで使える
Valveは2022年7月6日の更新で投了を追加した。使えるのはランクマッチで、5人全員が試合前から同じパーティを組んでキューに入った試合に限られる。試合開始30分後からオールチャットで”gg”と打つと、10秒のカウントダウンが始まる。1人でも止めれば成立せず、完走すれば敗北として記録される(Valve公式)。ソロ、デュオ、トリオで潜った試合では、“gg”を打っても投票は始まらない。複数の媒体もValveの原文と同じ内容で報じている(GosuGamers、ONE Esports)。
Valveの狙いは友人と組む後押し
自分は調べる前、この条件を「投了の乱用を防ぐための縛り」だと思っていた。野良の1人が”gg”を連打して試合を投げる、そういう場面を防ぐ設計だろうと。Valveの原文を読むと、投了は5人で遊ぶ人への後押しとして書かれていた。
Dotaは友人とグループで遊ぶのがいちばん面白いと私たちは考えている。この遊び方を後押しするため、こうした試合の質を上げる実験的な変更をいくつか入れる(Valve、2022年7月6日更新。訳は筆者)
この前置きの下に3項目が並ぶ。5人パーティがランクで5人パーティ以外とも当たるようになること、5人パーティのマッチングを速くする調整、そして”gg”による投了だ(Valve公式)。投了は、5人で組むことへの特典の1つとして置かれている。
LeagueとVALORANTの投票権は「その試合にいる全員」に自動で付く。Dota 2の投票権は「キューに入った時点の編成」で決まる。割合はVALORANT競技戦と同じ全員一致で、投票に参加する資格を試合前の編成で決めている点がDota 2の特徴だ。
では、投了そのものを置かないゲームは、負けが見えた試合をどう扱っているのか。
Overwatch 2は補充と罰則で扱う
Overwatch 2は、投了の機能を置かずに負けが見えた試合を扱っている。パッチノートにもBlizzard公式サポートにも、投了にあたる機能は出てこない(Blizzard公式サポート)。
代わりにあるのが「抜けた人に罰則を、残った人に補充を」という形だ。公式サポートに書かれた罰則は、モードで2段階に分かれる(Blizzard公式サポート)。
- アンランク: 直近20試合中2〜3試合の離脱で2分間キューに入れなくなる。繰り返すと10分、2時間、48時間と延びる
- 競技戦: 「Match Complete」画面の前に抜ければすべて離脱扱い。経験値75%減とキュー待機の延長、レートの低下を経て、最終的にはそのシーズンの競技戦から締め出される
Blizzardはこの設計の理由を、2023年10月の開発ブログ「Defense Matrix」に書いている。1人抜けると「すべての集団戦が、始まる前から負けているように感じる」。カジュアルの多くのモードでは抜けた枠をすぐ補充するが、入ってきた人はアルティメットのゲージがゼロから始まるので、それでも体験は損なわれる。だから繰り返し抜ける人を止めたい、という筋道だ(Blizzard公式ブログ)。
同じブログでは、競技戦以外で子どもの世話や技術的な問題で抜けるのは「おおむね問題ない」と明言し、罰則の狙いを「わざと抜けて、すぐ次のキューに入る人」に絞っている。Blizzardが見ているのは、抜けた人が次の試合を荒らすかどうかで、試合そのものは補充で続けていく。
4タイトルの答えが出揃ったので、並べて見る。
4タイトルの違いは3つの層に分かれる
必要な賛成、投票できる人、呼びかけられる時期、開発元が挙げた理由の4項目で並べ直す。
| タイトル | 必要な賛成 | 投票できる人 | 呼びかけ可能な時期 | 開発元が挙げた理由 |
|---|---|---|---|---|
| League of Legends | 5人中4人、または70%以上 | その試合の全員 | 15分から(通常戦・ランク共通) | 4人が同じ見立てなら逆転率は低い。どの試合をやり切るかはチームが選ぶ |
| VALORANT(通常戦) | 5人中4人(80%) | その試合の全員。未スポーンのAFKは母数から除く | ラウンド5から | 順位が懸からない場なので、より公平な試合へ早く移れるようにする |
| VALORANT(競技戦) | 5人全員 | その試合の全員 | ラウンド5から | 未消化ラウンドが敗北として順位に入るため、全員の合意を確かめる |
| Dota 2 | 5人全員(“gg”を誰も止めない) | ランクで5人パーティを組んで潜った試合のみ | 30分から | 友人と組んで遊ぶことの後押し |
| Overwatch 2 | 投了なし | ― | ― | 抜けた枠は補充し、繰り返し抜ける人を罰則で止める |
表にすると、違いが3つの層に分かれる。何割の賛成が要るか(League・VALORANT通常戦の8割と、VALORANT競技戦の10割)。誰が投票できるか(その試合の全員か、試合前に5人で組んだ人だけか)。そして投了があるかどうか。Overwatch 2は3層目で投了を置かない側を選び、Dota 2は2層目で投票の資格を5人パーティに渡している。
自分は、試合の中で決められるLeagueとVALORANTの型を好む。0対8になった時点の判断を、その場の5人が反映できるからだ。Dota 2の「5人で組むことへの特典」という筋書きも、原文を読んだ後は理由として通っていると思う。Overwatch 2は試合を補充で続け、競技戦の外では事情のある離脱を認めている。3つの型の違いは、判断をどこに預けるかにある。
まとめ
投了に必要な賛成は、Leagueが8割、VALORANTは通常戦が8割で競技戦が10割に分かれる。Riotはその理由を、4人が同じ見立てなら逆転率は低いこと、順位が懸かる試合では全員の合意を確かめたいことだと書いている。
Dota 2も全員一致で、投票を呼びかけられるのはランクで5人パーティを組んだ試合になる。Valveはこれを、友人と組んで遊ぶことへの後押しとして置いた。Overwatch 2は投了の代わりに抜けた枠を補充し、繰り返し抜ける人を罰則で止めている。
「負けが見えた試合を誰が終えるか」への答えは、賛成の割合、投票の資格、投了の有無という3つの層でゲームごとに分かれている。自分がよく遊ぶタイトルがどの層にいるかを知っていれば、0対8の場面で自分たちに何が選べるかが最初から分かる。
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