Litmus — 話題のニュースを、深く読み解く。 RSS
モビリティ

東京の無人タクシー、GO・Waymo・日本交通が2027年目標で合意

GO・Waymo・日本交通が、東京で完全無人の自動運転タクシーを2027年中に走らせる目標で合意した。GOアプリからも呼べる計画だが、正式な開始日は許認可待ちで未確定。決まったこととまだの条件を公式発表から整理する。

センサー機器を屋根に載せた白いジャガーI-PACEの自動運転車が、サンフランシスコの市街地を走っている写真

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Stephen Leonardi on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

GOアプリでタクシーを呼んだことがある人なら、そのうち同じアプリから「運転手のいない車」を呼べるようになる、と聞いて驚くはずだ。GO・Waymo・日本交通の3社は2026年9月15日、東京で自動運転タクシーを商用化することに向けた合意を発表した。目標は2027年中、運転席が空のまま走る「レベル4」の状態でタクシーを走らせること。ただし、この「2027年」は確定した開始日ではない。何が決まっていて、何がまだ条件として残っているのかを、発表内容から整理する。

何がどう変わるのか

3社の合意内容はこうだ。GOは地域のタクシー事業者との連携役を担い、タクシーアプリ「GO」を通じてサービスを提供する。Waymoは自動運転の運用基盤と車両管理システムを提供し、専用アプリ「Waymo」からも呼べるようにする。日本交通は現場の運行管理と営業所運営を担当する。つまり、1台の無人タクシーを、GOアプリからでもWaymoアプリからでも呼べる計画になる。

2025年からは東京都内7区で、日本交通の乗務員が同乗した状態での試験走行がすでに進んでいる。今回の合意は、その添乗員付きの試験から「一般のお客様への完全無人走行でのサービス提供」へ段階を進める、という宣言にあたる。目標規模は、発表資料によれば「段階的に100台規模」。初期の導入車種はジャガーの「I-PACE」で、Car Watchの記者会見取材によれば、GO中島宏社長は車種を将来的に拡大する可能性にも言及している。

3社の協業自体は今回が初めてではない。最初の提携発表は2024年12月で、そこから2年近くかけて添乗員付きの試験を積み上げてきた結果が今回の合意にあたる。GOの川鍋一朗会長は、2023年8月にアリゾナ州フェニックスで実際にWaymoに乗車した経験がきっかけで、日本への導入を交渉してきたとCar Watchの取材に答えている。

ここまでは「発表されたこと」だ。次に気になるのは、2027年という数字がどれくらい固いのかだろう。

「2027年中」は確定日程ではない

結論から言うと、2027年は3社が掲げた目標であって、行政が確約した日付ではない。自分も見出しだけを見たときは、2027年に東京のどこかで具体的に走り出すのだろうと思っていた。ところが発表資料の本文はこう書いている。「正式な運行開始時期は、確かな安全性が認められ、道路交通法や道路運送法等に規定された必要な許認可の取得が完了した後に決定されます」。つまり、許認可が取れるまで開始日そのものが存在しない。

どんな許可が要るのか。Car Watchの取材で、GOの川鍋一朗会長は「国土交通省、警察庁、東京都、自動運転タクシーを走らせる各区の許認可や賛同が必要」と説明している。国土交通大臣や警察庁長官はすでに前向きな姿勢を示しているというが、これは感触であって許可そのものではない。

この「許可」の中身は、法律上「特定自動運行」と呼ばれる制度に紐づいている。警察庁の説明によれば、令和5年(2023年)4月に施行された改正道路交通法にこの制度が新設された。運転者がいない状態での自動運転(レベル4)を行おうとする事業者は、都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。東京都で走らせるなら、実施方法をまとめた「特定自動運行計画」を提出し、審査を通す必要がある。川鍋会長が「道路交通法を変えてくれた」と語っているのは、この制度自体を指している。

つまり2027年という目標は、3社が「このスケジュールで許可を取りにいく」という意思表示であって、公安委員会が「このスケジュールで許可を出す」と決めた日付ではない。ここが今回の発表で一番読み違えやすいところだ。この記事が扱っているのは3社の目標であり、正式な運行開始日は許認可取得後に別途決まる

制度の骨組みが分かったところで、次に気になるのは「無人で本当に安全なのか」という点だ。

「94%」が指しているのは重傷以上の事故

無人で走らせる根拠は、許可制度だけではない。試験走行中の車の屋根には、複数のセンサーをまとめたユニットが載っている。Car Watchの取材で、Waymo共同CEOのテキドラ・マワカナ氏はこの仕組みをこう説明している。「統合した感知センサーは最大300m先まで360度見渡せる視野を持ち、自社AIと組み合わせることで周囲の生データを処理し、リアルタイムで安全な運転判断を行なっています」。

同じ会見でマワカナ氏は、走行実績にも触れた。「運転席に誰もいない状態ですでに2億マイル以上走行し、人間のドライバーと比較して交通事故を94%削減しました」という発言だ。数字だけ見ると「事故が94%減った」ように読めるが、Waymo公式のSafety Impactページを確認すると、原文の内訳はもう少し細かい。

  • 2026年3月までの無人走行距離: 220.6百万マイル(約3.55億km)
  • 重傷以上の事故: 人間のドライバーと比べて94%少ない
  • 傷害を伴う事故全般: 82%少ない
  • 歩行者が関わる負傷事故: 93%少ない

「94%」が指しているのは、傷害を伴う事故全体ではなく「重傷以上の事故」に絞った数字だ。全事故で見ると82%減にとどまる。会見での発言は正確には「重傷以上の事故が94%少ない」であり、「交通事故そのものが94%減った」と読むと実態より大きく見えてしまう。この94%も82%も、米国での走行実績に基づく数字だ。東京の道路環境で同じ水準の安全性が出るかどうかは、今回の資料からはまだ確認できない。

安全性の裏付けとなる数字の中身が分かったところで、あとは利用者として何が決まっているかを見ておく。

料金とエリアはどうなるのか

料金について、Car Watchの取材で日本交通の若林泰治社長は「現在日本で行なわれているタクシーの認可に基づく料金制度と同様の考え方で進めようと考えています」と答えている。既存のタクシー運賃の枠組みに準じる方向性は示されたが、具体的な金額表はまだない。

試験走行を行っている「東京都内7区」の区名、対象エリアの詳細、そして一般提供が始まった際の申し込み方法の細部は、今回確認できた資料には記載がなかった。これらは今後の発表で決まっていく部分になる。

まとめ

GO・Waymo・日本交通の3社は、2027年中に東京で完全無人(レベル4)のタクシーを100台規模で走らせる目標を掲げ、GOアプリとWaymoアプリの両方から呼べる体制を目指すことで合意した。2025年から続く添乗員付きの試験走行は、一般向けの完全無人サービスへ進める段階に入った。

正式な運行開始日は、道路交通法上の「特定自動運行」の許可を東京都公安委員会などから得た時点で決まる。2026年9月時点ではこの許可がまだ下りておらず、2027年はあくまで3社が掲げた目標にとどまる。安全性の根拠としてWaymoが示す「94%」という数字も、全事故ではなく重傷以上の事故に絞った削減率だ。料金は既存タクシーの運賃制度に準じる方向性がすでに示されており、許認可さえ整えば、GOアプリのタクシー配車に無人の選択肢が加わることになる。

この記事の先を読む本を探す

特定の本を勧めるものではありません。検索結果から、いまの版と目次を確かめて選んでください。

コメント

気づきや感想をどうぞ

記事への補足や、読んで考えたことをお寄せください。個人情報や、他の人を傷つける内容の投稿はお控えください。

コメントを読み込んでいます…

    ほかの記事

    最新の記事 →