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モビリティ

回転寿司バスが東京に登場、20席の少なさが最大の武器

2階建てバスの2階で寿司が回る「SUSHI BUS」が2026年10月、東京駅近くで走り出す。運営会社は移動手段ではなく食のアクティビティと位置づけ、世界に20席という少なさを参入障壁にしている。

観光用の二階建てオープントップバスの上階に座る乗客たちを後ろから写した写真

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Gül Işık on Pexels

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バスの2階で寿司がぐるぐる回っている——そんな動画が流れてきて、二度見した人もいるはずだ。二階建てのオープントップバスの上の階に、回転寿司のレーンがそのまま据え付けられている。「東京に新しい観光バスの路線でもできたのか」と思って調べ始めたら、運営会社自身が「これは移動手段ではない」とわざわざ断っていた。名前は「SUSHI BUS」、2026年10月に東京駅の近くから走り出す。正体を確かめようとすると、いつ・いくらで乗れるのか、そしてなぜ世界にたった20席しかないのか、疑問は次々に浮かんでくる。

見慣れないバスの正体は「食」だった

SUSHI BUSを企画・運営するのは、2026年5月に設立されたばかりの株式会社SUSHI BUS。公式プレスリリースによると、2階建てオープントップバスの1階にキッチン、2階に回転寿司のレーンを据える。1階で握った寿司は車内のエレベーターで2階へ運ばれ、係のキャストがレーンに流す。客は運行時間内、食べ放題で寿司を楽しめる。

車両の土台になっているのは、厨房設備を積んだ2階建てバス「レストランバス」だ。WILLER ACROSS株式会社が「東京レストランバス」として2016年から運行している。ミシュラン星付き店が監修するコース料理を約2.5〜3時間かけて食べながら都内を周遊する、和食・洋食のディナー観光として知られる存在だ。日本にこのレストランバスは5台しかなく、すべてWILLER GROUPが保有する。SUSHI BUSは、そのうちの1台をまるごと改装したものだ。回転寿司のレーンは、寿司コンベア業界最大手の北日本カコー株式会社と検証を重ねて組み込んだという。

自分はここで一度、予想と違うところにぶつかった。バスを使った新サービスと聞いて「新しい移動の選択肢ができた」と考えていたのに、公式発表はこう明言している。「あえて目的地(終着地)を設けないことで、移動手段ではなく『エンターテイメント型のフードアクティビティ』となっています」。行き先を決めないバスは、乗客をどこかへ運ぶためではなく、車内で寿司を食べる約70分間そのものを売るために走る。メインターゲットは、盛り上がりを見せているインバウンド観光客だと公式発表は位置づけている。

では、この「食のアクティビティ」は、いつ・どこで・いくらで体験できるのか。

運行開始日と発着地と料金

発着地は東京駅近くの鍛冶橋駐車場。渋谷スクランブル交差点や銀座通り、浅草の雷門前など、東京の観光地を目的地を定めずに巡る。運行時間は約70分で、この間ずっと食べ放題になる。

運行開始について、公式発表は「2026年10月より運行致します」とだけ記し、具体的な日付は書いていない。テレビ朝日系ANNの取材によれば、開始日は10月10日、料金は「約16,000円で検討中」だという。「検討中」という言葉どおり、これは確定額ではない。予約方法や受付開始の時期も、2026年9月27日時点で公式サイトは「Coming soon」の表示だけで、料金表も予約ボタンもまだ用意されていない。

座席は20席、稼働する車両は1台だけ。増やせなかったのだろうか。

なぜ「世界に20席」しかないのか

運営会社が示す皮算用はこうだ。20席×1日5回転で100席、1か月で3,000席、1年で36,500席が、稼働率をおよそ8割とみたときの最大値になる(公式プレスリリース「勝算その2」の節)。

この数字を、実在する回転寿司チェーンと並べてみる。

050000100000150000200000250000300000人/年SUSHI BUS(1台・最大想定): 36,500スシロー郊外型店舗(1店舗): 30万36,50030万SUSHI BUS(1台・最大想定)スシロー郊外型店舗(1店舗)

株式会社あきんどスシローの公式サイトによれば、郊外型店舗は1店舗で平均年間30万人が来店する。業態も客単価も違うので単純に比べられる数字ではないが、「世界初」と銘打つ回転寿司バスの最大供給量は、ふつうの回転寿司チェーン1店舗の1割程度に過ぎない。

これは技術的な限界ではなく、狙って選んだ規模だと運営会社は説明する。さきほどのレストランバス5台という希少さに加え、寿司レーンも業界最大手の北日本カコーとの提携なしには組み込めない。誰でも真似できる仕組みではないという「参入障壁」の高さこそ、この事業の勝算だと公式発表は位置づけている(「勝算その1」の節)。混んでいたら他の店に行けばいい、という比較の対象(代用品)が最初から存在しないことが、20席という少なさの正体だった。

代表を務める矢野智之氏は、学生時代からのべ約2,000日で120カ国以上を旅した経験を持つ。2016年からは訪日外国人観光客(顧客比率約95%)向けの体験型カフェ「忍者カフェ」を企画・経営してきた人物でもある。自分には、少ない席数で話題を作る手法自体は、矢野氏がこの事業で初めて試すものには見えない。公式発表はもう一つ、通行人の視線を集めることも狙いに挙げている。渋谷や銀座、浅草を走れば「見たこともないバス」として注目とスマートフォンでの撮影を浴びるはずだという。乗客を乗せて走ること自体が、街なかの宣伝にもなる設計だ。

数の少なさが分かったところで、次に気になるのは物理の方だ。バスは信号で止まり、揺れる。レーンの上の寿司は、本当に無事なのか。

揺れるバスの中で寿司の皿を守る仕組み

提供の流れは次のとおりだ。

  1. 1階のキッチンで寿司を握る
  2. 車内のエレベーターで2階へ運ぶ
  3. 2階の係が、隣接するレーンに寿司を流す
  4. 客は運行時間内、レーンから好きな寿司を取って食べる

土台の東京レストランバスには、すでに揺れ対策の前例がある。バスとりっぷの試乗記事によれば、テーブルにはコップやボトルを差し込んで固定する穴があり、フォークの下には滑り止めが敷かれている。だがこれは、動かない食器を揺れから守る工夫だ。回転寿司のレーンは逆に、寿司を乗せた皿がベルトの上を絶えず動き続ける。止まっている食器を固定するより、動いている皿をブレーキのたびに落とさない方が難しい。

この違いを踏まえてSUSHI BUS側が積んだ検証は、2024年4月の着想から約2年半に及ぶ。テレビ朝日系ANNの取材で、代表の矢野智之氏は「お皿が飛ぶか飛ばないかの実験」を100回以上重ねたと述べている。ただし、皿を固定する具体的な機構や技術の名称は、プレスリリースにも取材記事にも出てこない。効果を裏付ける数値も、今のところ非公開のままだ。悪天候のときは、2階の透明な天窓を閉め、冷暖房で調整するという。

まとめ

東京に来る「SUSHI BUS」は、観光バスでありながら運営会社自身が移動サービスと呼んでいない、食のアクティビティだ。2026年10月に東京駅近くから走り出し、料金は約16,000円で検討中、確定額と予約方法はまだ公式に発表されていない。座席はたった20で、年間の供給量も回転寿司チェーンの一般的な規模よりはるかに小さい。だがこれは失敗ではない。比較する代用品のない体験を作るために、運営会社が選んだ規模だった。

矢野氏はテレビ朝日系ANNの取材に「予定よりも早く2台目、3台目、4台目と計画を進めていきたい」とも述べており、車両を増やす計画自体はすでにある。ただし時期や台数は今のところ未発表だ。正式な料金と予約開始が発表されたら、確かめる価値がある。

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