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日本橋の地下、スマホのカメラだけで迷わず歩けるようになった

三井不動産とAshiraseが日本橋のCOREDO室町周辺で始めた「IndoorFlow」は、工事なしでスマホのカメラだけで屋内の現在地を1m以内の精度で特定する。視覚障がい者らの実証実験では目的地到達率100%だった。

屋内の階段とドアがあるコンクリートの通路で、手に持ったスマートフォンの画面を光らせている写真

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Jakub Zerdzicki on Pexels

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COREDO室町のような地下直結の商業施設を歩いていて、地図アプリの現在地が自分のいる場所からずれたり、青い点が止まったままになったりした経験はないだろうか。GPSの電波は地下にほとんど届かないので、地下街では「現在地」がそもそも当てにならない。

その前提に対して、三井不動産と技術提供元のAshiraseは2026年10月1日、屋内ナビゲーションサービス「IndoorFlow」の提供を始めた。公式発表が対象に挙げるのは、東京メトロ三越前駅の地下道と直結する次の6施設だ。

  • COREDO室町1・2・3
  • COREDO室町テラス
  • 日本橋三井タワー
  • YUITO

ビーコンもWi-Fiの追加設備も使わず、スマートフォンのカメラだけで現在地を特定するという。この記事では、工事なしでなぜ位置がわかるのか、その精度はどれくらい信頼できるのかを、公式発表の数字から確かめる。

なぜGPSなしで位置がわかるのか

GPSは衛星からの電波を受信して位置を計算する仕組みなので、天井や壁に電波が遮られる地下では機能が弱くなる。これまでの屋内測位は、天井にビーコンを設置したりWi-Fiの電波強度を測ったりして、この弱点を設備側で補ってきた。

IndoorFlowが使う「VPS(Visual Positioning System)」は、この補い方が違う。三井不動産の発表によれば、スマートフォンのカメラで「周囲の環境を認識して現在地を把握」する。Ashiraseのサービスページが説明する使い方は3ステップだ。

  1. スマートフォンを軽くかざして周囲をスキャンする
  2. 画面と音声で最短ルートが示される
  3. 歩くたびに現在地がリアルタイムで更新され、目的地まで誘導される

「周囲をスキャンする」とだけ聞くと簡単そうだが、実際にはこの一瞬で、事前にその場所を撮影しておいたデータと照合する処理が走っている。Impress Watchの報道によれば、施設側はあらかじめ360度カメラで館内を撮影し、「点群データ」という3次元の記録を作っておく。利用者がその場でスマートフォンのカメラをかざすと、いま写っている映像をこの点群データと照合して現在地を割り出す。位置の特定に使っているのは衛星ではなく、あらかじめ撮っておいた地下の景色そのものになる。

ビーコンやWi-Fiの基地局を新設する必要がないのは、位置の手がかりを「空間に設置した機器」ではなく「空間そのものの見た目」に持たせているからだ。天井や壁に新しい機器を1つも足さずに、施設側は事前に空間を撮影するだけで準備が終わる。Ashiraseのサービスページが導入期間を「最短1か月程度」としているのも、工事を伴わないこの仕組みが理由にあたる。

GPSが届かない自分には、屋内の位置測位は天井にビーコンを並べるしかないと思っていた。スマホのカメラ映像を照合するだけで済むという発想は、意外だった。次に気になるのは、この照合がどこまで正確に現在地を当てられるかだろう。

その精度はどこまで信頼できるのか

仕組みがわかっても、実際にどれだけ正確に現在地を言い当てられるかは別の話だ。Ashiraseのサービスページは、精度を「位置を特定できた場合の95%が1m以内のズレに収まっている」と説明している。

この数字が意味を持つのは、実際に歩く人を対象にした実証実験の結果と合わせて見たときだ。三井不動産の発表によれば、視覚障がい者・車いす利用者あわせて42名が参加した事前の実証実験で、目的地への到達率は100%だった。参加者の88%が「移動時の不安が解消された」と回答している。

GPSがまったく使えない場所で、全員が目的地にたどり着けたという結果は、1m以内という精度の数字よりも分かりやすく効果を伝えている。案内方式も利用者によって分かれており、視覚障がい者向けには音声・振動案内、一般の利用者向けには画面上のAR表示と多言語案内が用意されている。画面を見て初めて意味を持つAR表示に対し、画面に頼れない人には音声・振動という別経路を用意した作り分けだと自分は読んだ。

この技術を提供するAshiraseは、視覚障がい者向けに靴へ取り付けて使う歩行支援機器「あしらせ」を手がける会社だ。あしらせは屋外で、足の甲の振動によって「両足が振動すれば直進、右足なら右折、左足なら左折」と方向を伝える製品になる。屋外の歩道で足元から道を伝えてきた会社の技術が、今度は屋内の商業施設で現在地そのものを特定する側に回った形だ。精度と実証の結果がわかったところで、気になるのは自分がいつ・どこでこれを試せるかだろう。

今日からどこで使えるのか

実際に使える範囲は、まだ三越前駅周辺の6施設と地下道に限られる。アプリの対応状況にも段階があり、Impress Watchの報道によれば次の順で広がる予定だ。

  • 現時点: iOSアプリのみ利用できる
  • 2026年秋: Webブラウザ版を公開予定
  • それ以降: Androidもブラウザ経由で対応する見込み

今iPhoneを持っていない人は、この後の対応拡大を待つことになる。

この記事が当てはまるのは、施設側が導入費用を負担する今回の契約の形だ。Ashiraseのサービスページが示す「初期費用と月額の利用料金」は、三井不動産のような施設の運営者がAshiraseと結ぶ契約を指しており、歩く人が個別に支払う金額ではない。IndoorFlowは、商業施設がビーコンの代わりに導入する設備という位置づけになる。

対応言語は日本語・英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・マレー語の6言語で、AR表示と合わせて訪日観光客の案内にも使える作りになっている。撮影した映像に写り込んだ人の顔や車のナンバープレートは自動でぼかされる。

広がり方にも理由がある。Ashiraseのサービスページは「1フロアからのスモールスタート」に対応すると説明しており、建物全体を一度に撮影しなくても、使う範囲から順に導入できる。三井不動産は今後、八重洲・東京駅周辺などへの展開も視野に入れていると説明している。Ashirase側でも、東京都庁や広島駅、丸の内などで導入・実証・商談が60件以上進んでいるという。日本橋での今回の導入は、同じ技術が広がっていく最初の区画にあたる。

まとめ

三井不動産とAshiraseは2026年10月1日、東京・日本橋のCOREDO室町周辺6施設と地下道で、屋内ナビゲーションサービス「IndoorFlow」の提供を始めた。ビーコンやWi-Fiの追加設備を新設せず、スマートフォンのカメラで周囲の映像を事前の点群データと照合することで、現在地を95%の確率で1m以内の精度まで特定する。

視覚障がい者・車いす利用者42名による実証実験では、目的地到達率が100%に達した。GPSが届かない屋内でも実用に足る精度が出ていることを、公式発表の数字が裏づけている。今はiOSアプリのみの提供だが、Web版・Android対応や八重洲・東京駅周辺への展開も予定されている。

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