家電量販店で欲しいものが揃い、モバイルSuicaをかざしたら「ご利用可能額を超えています」と断られた。電子マネーには2万円という上限があることを、こういう瞬間に知る。JR東日本は2026年10月20日11時から、この上限を超えて支払える新しい決済サービス「teppay(テッペイ)」をモバイルSuicaのアプリに追加する。友人との割り勘や家族への送金も、追加のアプリなしでできるようになる。残る疑問は、2万円の上限がなぜ、どうやって超えられるのかという点と、使うために何を用意すればいいかという点になる。
teppayは10月20日開始
2万円を超えて支払える新しい残高「teppay」は、2026年10月20日11時以降、モバイルSuicaのアプリの中で順次使えるようになる。公式サイトの説明によれば、対象は今モバイルSuicaを使っている利用者全員で、トラベルWatchの報道も「追加アプリ不要」と伝えている。新しいアプリを探してインストールする必要はない。
モバイルPASMO向けの提供は2027年春の予定で、現時点ではSuicaだけが対象になる(公式サイト、2025年11月付のJR東日本のリリース)。このリリースでは提供時期が「2026年秋」としか決まっておらず、今回の発表で初めて具体的な開始日が定まった形になる。
ここで気になるのは、この上限が具体的にどういう仕組みで超えられるのかという点だ。
電子マネーとは別の財布が増える
teppayでどこまで支払えるようになるのか、まず金額で見る。
公式サイトは「モバイルSuica/モバイルPASMOの上限額(2万円)を超える、最大30万円までのお支払いがteppayでは可能です」と説明している。数字だけ見ると、電子マネーの上限そのものが2万円から30万円へ引き上がったように読める。自分も最初はそう思って読んだが、公式サイトの各ページを見比べると、実際の設計は違った。
この30万円は、Suica電子マネーの残高とは別枠で持てる「teppay残高」という、新しい財布の上限になる。 モバイルSuicaのアプリの中に、2万円までの電子マネーと、最大30万円まで持てるteppay残高という、上限の違う2つの財布が並ぶことになる。受け取ったteppay残高は、そのまま交通系ICの残高にチャージすることもできる(公式サイト「送る・受け取る」)。電子マネーの上限そのものが変わるわけではないので、普段どおりの改札通過やコンビニでの少額払いは、これまでと同じ2万円の財布のまま続く。
30万円という上限は、何もしなくても手に入るわけではない。これを使うには何が要るのか、という疑問に移る。
本人確認にはマイナンバーカードが要る
teppay残高を最大30万円まで持つには、本人確認が条件になる。Impress Watchの報道は「マイナンバーカードによる本人確認を行うことで、teppay残高は最大30万円まで利用可能」と伝えている。
公式サイトの説明によると、本人確認に使えるのはカードタイプのマイナンバーカードだけで、スマートフォンのウォレットアプリに登録したものは使えない。カード発行時に設定した6〜16桁の署名用電子証明書パスワードと、NFC対応のスマートフォンも必要になる。本人確認をすると、残高の上限が引き上がるほか、使える機能も増える。内容は次の表にまとめた。
| 項目 | 本人確認前 | 本人確認後(マイナンバーカード) |
|---|---|---|
| teppay・Smart Codeマークの店での支払い | できる | できる |
| 受け取った残高の交通系ICへのチャージ | できる | できる |
| 残高の上限額 | 具体的な金額は公式サイトに記載なし | 最大30万円 |
| 銀行口座からのチャージ | ー | できる |
| teppay JCBプリカの発行 | ー | できる |
| 本人確認者限定キャンペーンへの参加 | ー | できる |
| 自治体からの給付金の受け取り | ー | できる |
上の2行は、本人確認の条件に触れずに説明している公式サイトの「teppayについて」をもとにした。下の5行は、本人確認ページが本人確認後にできることとして挙げている項目をもとにした。本人確認前の具体的な上限額は、公式サイトに数値の記載がなく確認できなかった。大きな金額を使うつもりなら、先にマイナンバーカードでの本人確認を済ませておく必要がある。
ここまでで、支払いに使える上限と、そのための条件が分かった。teppayにはもう一つ、残高を送り合う機能もある。具体的にはどうやって送るのか。
送金は電話番号やQRコードで行う
teppay残高は、他のteppay利用者との間で送ったり受け取ったりできる。公式サイトの説明によると、送り先の指定方法は次の3通りになる。
- 電話番号またはteppay IDを指定する
- 相手に表示したQRコードを読み取ってもらう
- 送金用のURLを送る
トラベルWatchの報道は、この機能が「割り勘やおこづかいといったシーン」で使えると伝えている。飲み会の精算や子どもへの仕送りを、現金のやり取りや別の送金アプリなしで済ませられる計算になる。送金自体の上限額や手数料については、公式サイト・報道のどちらにも具体的な数値の記載がなく、確認できていない。
使える送金方法が分かったところで、最後に残るのは、実際にどこで使えるのかという点だ。
使えるのはteppayマークの店
teppayは、「teppayマーク」か「Smart Codeマーク」のある店で使える(公式サイト)。トラベルWatchの報道は、具体例としてルミネ・アトレといった駅ナカの商業施設や、ニューデイズなどのコンビニを挙げている。ホテル・百貨店・家電量販店も対象で、ビックカメラは10月20日に対応するという。
加盟店の数は、Impress WatchとトラベルWatchがともに、2026年10月時点で「全国170万か所以上」と報じている。2025年11月付のJR東日本のリリースでは「160万か所以上」だったので、この1年弱で加盟店が増えたと読める。ただし取材のたびに集計方法が変わっている可能性もあり、単純な増減かどうかまでは確認できていない。
クレジットカードの「ビューカード」を紐付けると、Impress Watchの報道によれば、事前のチャージなしでカードの利用限度額まで支払えるという。同じ報道は、teppay残高での支払いに0.5%の「teppayポイント」、ビューカード連携での支払いに1%のJRE POINTが付くとも伝えている。どちらも公式サイトには数値の記載が見当たらず、報道のみで確認した数字になる。
まとめ
モバイルSuicaには2026年10月20日11時から、新しい決済サービス「teppay」が加わる。電子マネーの2万円という上限はそのままに、本人確認をすれば最大30万円まで持てる「teppay残高」という、別の財布が追加される形になる。受け取った残高は交通系ICへのチャージにも回せるので、電子マネーの外側に、家族や友人と送り合える財布がもう一つできることになる。使うのに必要なのは、本人確認用のカードタイプのマイナンバーカードとNFC対応スマートフォンで、追加のアプリは要らない。
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