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決済

Mastercard、停電でもカードが使えるオフライン決済を欧州で義務化

Mastercardは欧州で、停電や通信障害時にカードのICチップの上限額までその場で決済を承認できる仕組みを2027年までに義務化する。4か国では既に実例がある。

ICチップが見える白いカードを、PINキーパッド付きの決済端末にかざす手元

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Towfiqu barbhuiya on Pexels

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2025年4月、スペインとポルトガルで大規模な停電が起きた。推定5,500万人が、その間カードでの支払いができなくなったという。Mastercardの発表によると、Mastercardは2026年10月9日、この種の事態でもカード決済を止めない仕組みを欧州全域で義務化すると発表した。停電中でも、カードのICチップに保存された上限額までなら、店の端末がネットワークなしでその場で決済を承認できるようにする。残る疑問は、こうした事態がどれくらい起きているのかという点と、ネットワークなしでどうやって承認が成り立つのかという点になる。

停電でカードはどれくらい止まるのか

2025年4月の停電は、送電網の異常で2カ国がほぼ同時に広範囲停電になった例だった。店舗のレジ端末も通信回線も同時に落ち、現金以外の支払い手段がまとめて使えなくなった。Mastercardはこの経験を、今回の義務化の背景として挙げている。

似た事態はこの数年、他の国でも起きている。デンマークでは今年春、技術的な障害で一部端末が決済網から切り離された。ラトビアでも、嵐の際に停電した地域があった。Mastercardの発表は、ラトビアでは非常用発電機で電力を確保した店舗がカード決済を続けられたとしている。発生の日付など詳しい経緯までは公式発表に記載がない。それでも、停電や通信障害が起きるたびに「現金しか使えなくなる」という事態が各地で繰り返されてきたことは分かる。

では、Mastercardは具体的に何を、いつまでに義務づけたのか。

義務化の内容と期限

Mastercardの発表によると、義務化は2段階に分かれる。2027年2月以降、欧州で新しく発行されるMastercardカードは、すべてオフライン決済に対応した状態で発行される。2027年5月までには、新規に設置される、または交換される決済端末もオフライン取引を受け付けられるようにしなければならない。

対応が済めば、停電や通信障害が起きても操作は変わらない。暗証番号(PIN)を入力する従来どおりの手順で、スーパーマーケットや食料品店、ガソリンスタンド、薬局、交通機関の券売機などで生活必需品を買えるようになる。

この2027年という時期は、EUや各国政府が定めた規制ではない。Mastercardが自社のカード・端末のルールとして決めたものだ。対象になるのは、欧州発行のMastercardカードと、Mastercardに対応する欧州の加盟店に限られる。

対応の中身は分かった。残る疑問は、ネットワークに繋がっていない端末が、どうやって「この取引は通していい」と判断できるのかだ。

オフライン承認の仕組み

ふだんのカード決済は、店の端末がネットワーク経由で発行銀行に問い合わせ、残高や利用枠を確認してから承認するという流れになっている。端末単体では、目の前のカードが使えるかどうかを判断できない。

オフライン決済は、この問い合わせの手順を省く。Mastercardの発表によれば、仕組みは次の順で動く。

  1. カード会員の発行銀行が、1回あたりの上限額(最大200ユーロ)をあらかじめ決め、その情報をカードのICチップに安全な形で書き込んでおく
  2. 店の端末がネットワークへの接続を失う
  3. 端末は、チップに書き込まれた上限の範囲内であれば、通信なしでその場で取引を承認する
  4. 通信が復旧すると、承認済みの取引記録がまとめて送信され、通常の清算処理に回る

つまり、銀行があらかじめ決めて渡しておいた上限までは、カードと端末だけで判断が完結する。

オフライン中は、端末がそのカードの盗難届の有無や利用枠の残りをリアルタイムには確認できない。発行銀行から見れば、その場で確認できない以上、上限額を低く抑えることがそのままリスク管理になる。200ユーロという上限は、停電時に生活必需品を買うには足りても、高額な買い物には使えない水準に設定されている。上限を決めるのが国際ブランドのMastercardではなく各カードの発行銀行であるのも、確認できないリスクを最終的に負うのが発行銀行だからだ。

この仕組みが分かると、対応カードさえ受け取ればすぐにどこでも使えるようになるのか、という疑問が浮かぶ。

対応カードはいつから使えるか

ここで見落としやすいのが、カードと端末で義務化の時期が3か月ずれている点だ。

02468ヶ月新規発行カード: 4か月後(27年2月)新規・交換端末: 7か月後(27年5月)4か月後(27年2月)7か月後(27年5月)新規発行カード新規・交換端末

棒の長さは、2026年10月の発表からの経過月数として算出した(根拠はMastercard公式発表が示す2027年2月・2027年5月という期日)。カードが対応するのが先で、端末が対応するのはその3か月後になる。つまり2027年2月にオフライン対応のカードを受け取っても、店の端末がまだ交換前の古いものなら、その店ではオフライン決済の恩恵を受けられない3か月間が生まれる。すべての端末が入れ替わるまでには、義務化の期日を過ぎてからも一定の時間がかかる。

もっとも、この仕組みは2027年を待たずに、すでに動いている実績がある。

すでに4か国で実際に動いている

タイトルだけを見ると、2027年に向けた将来の計画のように読める。しかしMastercardの発表を読むと違う実態が見えてくる。オフライン決済はデンマーク・スウェーデン・エストニア・ラトビアの4か国で、今回の義務化を待たずにすでに導入済みだという。自分はここで一度止まった。今回の発表は「新しい仕組みを作る」話ではなく、「すでに一部の国で動いている仕組みを、欧州全域の標準に広げる」話だったからだ。

実例も具体的だ。ラトビアでは嵐による停電の際、非常用発電機で電力を確保した店舗がカード決済を続けられた。デンマークでは今年春に技術的な障害で端末が決済網から切り離されたときも、危機対応の手順に沿って主要な加盟店の決済を継続できたという。どちらも、停電や通信障害が起きてから数時間・数日といった短い期間の出来事で、長期間の障害を想定したものではない。それでも、仕組みが机上の構想ではなく実際の障害時に機能した例があるという点は、2027年の義務化を評価するうえで判断材料になる。

Core Payments担当のBrice van de Walle氏は発表の中でこう述べている。「電力やネットワークが止まっても、人々は食料や燃料、薬を買う必要がある」。そして「オフライン決済が実際に違いを生むことを確認してきた」とも続けている。

まとめ

Mastercardは2026年10月9日、欧州全域でオフライン決済対応を義務化すると発表した。2027年2月以降に発行される新しいMastercardカードはすべてオフライン対応になる。2027年5月までには、新規・交換の決済端末もオフライン取引を受け付けるようになる。仕組みはこうだ。発行銀行があらかじめ決めた上限額(最大200ユーロ)をカードのICチップに保存しておき、端末がネットワークを失ってもその範囲内でその場で承認する。通信が復旧すれば、取引は通常どおり清算される。

カードと端末で対応時期が3か月ずれるため、対応カードを受け取ってもすぐに全ての店で使えるとは限らない。それでも、デンマーク・スウェーデン・エストニア・ラトビアの4か国では、すでに実際の停電・障害時にこの仕組みが機能した実例がある。2027年の義務化は、その実績の延長線上にある。この記事が当てはまるのは、欧州で発行されたMastercardカードと欧州の加盟店に限られる。日本で発行されたカードや、Mastercard以外の国際ブランドは、今回の発表の対象には含まれていない。

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