Litmus — 話題のニュースを、深く読み解く。 RSS
AI

有料のChatGPTやClaudeでも会話は学習に使われる。分かれ目は法人契約だった

ChatGPT・Claude・Geminiの公式ページを比較すると、学習に使われるかどうかを分けるのは金額ではなく、個人向けか法人向けかという契約の種類だった。

白黒写真で、オフィスの窓際でノートパソコンのキーボードを打つ手元

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Christina Morillo on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

「有料版を使っているから、この下書きを貼っても平気」。同僚が私物のスマホでChatGPT Plusを開き、仕事の文面を打ち込みながらそう言うのを見たことがある人は少なくないはずだ。無料版は学習に使われるが、課金しているなら別扱いになる——そう思い込んでいないだろうか。ChatGPT・Claude・Geminiの公式ページを確認すると、答えは逆だった。3社とも、個人向けプランは有料でも既定で学習に使われる側に入る。使われないのは金額ではなく、契約の種類で決まっていた。

有料プランでも「学習に使う」設定はオンのままか

OpenAIのヘルプセンターは、ChatGPT Free・Plus・Proの個人向けワークスペースについて「データ共有は既定でオンで、オプトアウトできる」と説明している。オフにするには設定の「データコントロール」から「Improve the model for everyone」を切る必要がある(OpenAI Help Center)。無料のFreeも、月額課金のPlusも、上位のProも、この既定値に差はない。

Anthropicも同じ形になっている。Claude Free・Pro・Maxはいずれも「Help improve Claude」が既定でオンだ。ユーザーが手動でオフにしない限り、会話は学習に使われる(Anthropic Privacy Center)。ここでも、無料のFreeと月額課金のPro・Maxのあいだに設定上の違いはない。

つまり「お金を払っているから守られている」という予想は、この2社に関しては前提から外れる。有料プランが買っているのは応答速度や利用回数であって、学習からの除外ではない。では、学習に使われない設定はどこにあるのか。

分かれ目は「個人向けか法人向けか」

OpenAIはChatGPT Business・Enterprise・Edu、それにAPIについて「既定で入力・出力ともにモデルの訓練に使わない」と明記している(OpenAI)。AnthropicもTeam・Enterprise(Claude for Work)とAPIは既定で学習に使わない。例外はDevelopment Partner Programに参加を選んだ場合だけだ(Anthropic Privacy Center)。3社分をまとめると、次のようになる。

サービス個人向けプラン学習利用の既定法人向け契約学習利用の既定
ChatGPTFree / Plus / Proオン(オプトアウト可)Business / Enterprise / Edu / APIオフ(既定で使わない)
ClaudeFree / Pro / Maxオン(オプトアウト可)Team・Enterprise(Claude for Work) / APIオフ(既定で使わない)
GeminiGemini Apps(無料・Google One AI Premium)オン相当(人間レビューあり)Gemini for Google Workspace・Cloudオフ(ドメイン外での訓練・レビューなし)

表からわかるのは、料金プランの上下ではなく「個人向け契約か、法人向け契約か」という契約の種類そのものが境界線になっていることだ。ややこしいのは名前の付き方で、Claudeには消費者向けの「Team」と、法人契約であるClaude for Workの一部としての「Team」が別に存在する。前者は個人がクレジットカードで申し込むプランで学習利用がオンの側、後者は組織が契約する側で学習利用がオフの側に入る。プラン名の見た目だけで判断すると、この2つを取り違えやすい。

Anthropicの規約変更が、この境界を裏付けた

このプラン名の境界が偶然の一致ではないと分かる出来事が、2025年にあった。Anthropicは2025年8月28日、Claude Free・Pro・Maxの消費者向け利用規約とプライバシーポリシーを更新し、「Help improve Claude」を既定オフから既定オンへ切り替えた。既存ユーザーには同意を求めるポップアップが表示され、2025年10月8日までに選択するよう求められた(Anthropic)。学習を許可した場合の会話データの保持期間は最長5年、許可しない場合は従来どおり30日と、5年分ここで差が開く(同上)。

自分がこの記事を書くまで意外だったのは、この変更が月額課金のPro・Maxにも例外なく及んでいたことだ。値上げされるほど保護が手厚くなる、という感覚のほうが自然に思えていた。しかし変更の対象はあくまで「個人向け契約かどうか」で区切られており、Team・Enterprise(Claude for Work)とAPIはこの規約変更の対象外のままだった(同上)。海外メディアは、既存ユーザーへの同意ポップアップの見せ方を「ダークパターンに見える」と報じている(GIGAZINE)。有料か無料かでは動かない境界線を、規約変更という形で目に見えるようにした出来事だったといえる。

Googleは「学習」だけでなく「人間が読むかどうか」も分かれる

Googleの個人向けGemini Apps(無料版・Google One AI Premiumを含む)は、「アクティビティの保存」が既定でオンになっている。一部の会話は品質改善のために人間のレビュアーが読む。保存期間は既定18か月で、レビュー対象になった会話は最大3年保持される(Gemini Apps Privacy Hub)。同じページには「職場・学校のGoogleアカウントでは扱いが異なる場合がある」と明記されている。

その「異なる扱い」の中身は、Google Workspace向けの案内で確認できる。ドメイン外のモデル訓練に顧客のコンテンツを使わず、許可がない限り人間によるレビューもしないとしている(Generative AI in Google Workspace Privacy Hub)。ChatGPTやClaudeが「学習に使うか使わないか」の一段階だったのに対し、Googleにはこれに加えて「人間が読むかどうか」という軸もある。無料のGemini Appsで交わした会話は、モデル改善の目的であっても人の目に触れる可能性がある設計になっている。

自分がどちら側にいるか、今すぐ確認する

ここまでの3社に共通するのは、無料か有料かという軸では境界が引けないという一点だ。判断材料になるのは、自分のアカウントが個人の支払いで契約しているか、それとも組織が契約した法人向けの枠に招待されているかになる。次の2つを見れば見分けがつく。

  • 支払いが個人のクレジットカードか、会社の請求先かを確認する。会社のSSO(シングルサインオン)経由でログインしている場合は、法人向け契約に入っている可能性が高い
  • 各社の設定画面で、学習利用のオン・オフを切り替える項目を探す。ChatGPTなら「データコントロール」、Claudeなら「プライバシー」内の「Help improve Claude」、Geminiなら「アクティビティ」が該当する。個人向けプランではここが操作できる状態で並んでいるはずで、見当たらない場合は法人向け契約に入っている可能性を疑ってよい

私物のスマホやPCで、会社が契約していない個人向けプランを使って仕事の内容を入力している場合、どれだけ高いプランに課金していても学習利用の既定はオンの側にある。ここで書いた既定値は2026年9月時点の各社公式ページに基づくもので、規約は今後も改定され得る。最終的な判断は、自分のアカウントの設定画面を実際に開いて確かめるのが最も確実だ。

まとめ

  • ChatGPT・Claude・Geminiとも、個人向けプランは有料でも既定で学習利用の対象になり得る。無料版と有料版のあいだに設定上の違いはない
  • 学習に使われないのは法人向け契約(Business・Enterprise・Team for Work・Workspace)とAPI。分かれ目は金額ではなく契約の種類
  • Anthropicは2025年8月28日、この境界を保ったまま個人向けプランの既定値だけを「学習に使う」側へ切り替え、有料のPro・Maxユーザーも対象になった
  • Geminiには「学習に使うか」に加えて「人間が読むか」という軸もあり、無料のGemini Appsはどちらも既定でオンになっている
  • 自分の契約が個人向けか法人向けかは、支払い方法とアカウント設定の項目の有無で見分けられる

この記事の先を読む本を探す

特定の本を勧めるものではありません。検索結果から、いまの版と目次を確かめて選んでください。

コメント

気づきや感想をどうぞ

記事への補足や、読んで考えたことをお寄せください。個人情報や、他の人を傷つける内容の投稿はお控えください。

コメントを読み込んでいます…

    ほかの記事

    最新の記事 →