2026年9月10日、Appleが「iPhone 18 Pro」と「iPhone 18 Pro Max」を発表した。価格は21万9,800円から、発売は9月18日の予定だ。ITmediaの報道
発表で強調されているのが「最大50%の充電が約15分で完了」という数字だ。家に65Wや100WのUSB-C充電器があれば、そのまま速く充電できると思うかもしれない。だがApple自身の説明を読むと、この数字にはワット数とは別の条件が付いている。充電器がその条件を満たしていないと、店頭で見た「15分」は再現されない。
「15分で50%」に付いている条件は何か
Appleの製品ページで、この数字には脚注が付いている。見出し自体にも「対応する電源アダプタを使用」という一文が添えられ、詳細は脚注に送られる形だ。
脚注の文言はこうだ。「両方のテストでApple 40Wダイナミック電源アダプタ(最大60W対応モデルA3351)を使用。有線高速充電には、60W対応のUSB-CケーブルとUSB PD 3.1(またはそれ以上)の可変電圧供給(AVS)電源アダプタで対応。」Apple「iPhone 18 Pro」
自分はワット数さえ足りれば同じ速さで充電できると思っていたので、ここで一度止まった。条件は「60W」というワット数の指定に加えて、「USB PD 3.1(またはそれ以上)の可変電圧供給(AVS)」という、家電量販店の充電器コーナーではあまり見かけない言葉だった。
AVSとは何か。手元の充電器に必要なのは、ワット数の大きさなのか、それとも別の何かなのか。
AVSとPPS、何が違うのか
答えを先に言うと、AVSは充電器とスマホが電圧を調整するときの方式の名前で、電圧を100mV刻み、電流を固定して制御する。よく見る「PPS」という表示は、電圧・電流とも20mV刻みで細かく制御する別の方式だ。同じUSB PDの枠組みにありながら、制御のやり方が違う。
USB PD(USB Power Delivery)は、USB-IFという業界団体が定める充電規格で、つないだ機器どうしが電圧と電流を交渉して決める仕組みだ。AVS(Adjustable Voltage Supply、可変電圧供給)は、その中で新しく加わった調整方式になる。
AVSはまず2021年、100Wを超える範囲(EPR、主にノートPC向け)を対象にPD 3.1で規定された。iPhoneのような100W以下の機器を対象にした「SPR AVS」が加わったのは2023年10月のPD 3.2からで、この版では27Wを超える電源供給能力を持つ製品にSPR AVSへの対応が必須と定められている。GraniteRiverLabsの技術解説
電圧の範囲は9〜15Vで最大45W、45W超では9〜20Vになる。USB-IFの文書一覧でも、現行の仕様書は「USB Power Delivery Specification Revision 3.2 Version 1.2」だと確認できる。USB-IF Document Library
| 項目 | PPS | AVS |
|---|---|---|
| 規定された版 | USB PD 3.0 | PD 3.1(EPR)/PD 3.2(SPR) |
| 制御する量 | 電圧・電流とも可変 | 電圧のみ可変、電流は固定 |
| 刻み幅 | 20mV | 100mV |
| 主な対象 | 100W以下の機器全般 | EPR=ノートPC等、SPR=スマホ・タブレット等 |
Chargerlabの技術解説をもとに、この記事の論点に関わる項目だけを抜き出した表になる。PPSとAVSは同じPDの中にある別の方式で、どちらか一方に対応していればもう一方にも対応している、という関係ではない。
つまりiPhone 18 Proの「15分で50%」を再現するには、単なるPD対応でもPPS対応でもなく、SPR AVSに対応した充電器が要る。ワット数の表示だけでは、この対応の有無は分からない。
この条件はiPhone 18が初めてではないようだ。報道によると、前年のiPhone 17シリーズもすでに同じ40Wダイナミック電源アダプタとAVSの組み合わせで「50%を約20分」という数字を出していた。
では、手元の充電器がこのAVSという条件を満たしているかは、どこを見れば分かるのか。
充電器のどこを見ればAVS対応か分かるか
パッケージや商品ページに「AVS」と書かれていれば分かりやすいが、今回確認した範囲では、市販の充電器の多くは「PD対応」「PPS対応」「◯W」という表示が中心で、AVSの文字を前面に出していない製品が目立つ。買う前に確認する順番を整理する。
- 充電器のスペック表で「AVS」または「PD 3.2」の記載を探す
- 記載がなければ、メーカーの製品ページで型番から仕様を確認する。「PD 3.0」「PPS」のみの記載なら、AVSには対応していない可能性がある
- 使うケーブルも60W対応かを確認する。Appleの脚注はアダプタだけでなくケーブルの対応も条件にしている
この3つを確認できないまま「高いワット数だから大丈夫」と判断すると、店頭で見た「15分」という数字とはずれた結果になる可能性がある。
そもそもAVSがパッケージに書かれにくいのには理由がありそうだ。USB-IFが公開している充電器向けのページを見ても、「AVS」「PPS」という言葉自体が出てこない。USB-IF「USB Charger (USB Power Delivery)」 以前、USB-Cケーブルの認証マークを調べたときも、電力を表す消費者向けマークは60Wと240Wの2種類だけだった。ワット数と違い、AVSやPPSは消費者向けロゴ制度の語彙になっていない。充電器メーカーがパッケージに書くかどうかは義務ではなく、各社の判断に委ねられている。
では、AVSの表記がない充電器を実際に使うと、充電時間はどれくらい変わるのか。
AVSがないと、実際どれくらい遅くなるのか
ここまでの話だと、AVS非対応の充電器では大きく見劣りする結果になりそうに思える。だが実際に測った記事を見ると、差はそこまで大きくなかった。
充電器を扱うMOTTERUの実測記事では、AVS対応の明記がない65W出力の充電器で0〜100%が約1時間40分、Apple純正のAVS対応40Wダイナミック電源アダプタで約1時間33分だった。差は7分ほどにとどまり、記事の著者自身も「SPR AVSが有効に動いているかというとそうでもないように思います」と述べている。MOTTERU「iPhone 18 Pro Maxの充電性能」
自分はAVSがないと大きく遅くなるはずだと予想していたので、この数字は意外だった。ただし、この実測は0〜100%の通しの時間で、Appleが公表している「15分で50%」という充電の立ち上がり区間とは測っている区間が違う。序盤の立ち上がりだけを見れば差がもっと開く可能性もあり、この実測だけで「AVSはなくても変わらない」とまでは言えない。
まとめ
- iPhone 18 Proの「最大50%の充電が約15分で完了」は、Apple自身の脚注で「60W対応のUSB-CケーブルとUSB PD 3.1(またはそれ以上)のAVS電源アダプタ」という条件付きの数字だと分かる
- AVSはUSB PDの中の一方式で、電圧を100mV刻み・電流固定で調整する。電圧・電流とも20mV刻みで調整するPPSとは別物で、どちらか一方の対応がもう一方を保証しない
- 充電器を選ぶときは、ワット数だけでなく「AVS」または「PD 3.2」の表記があるかを確認する
- 実測では、AVS非対応でも0〜100%の充電時間差は数分程度という報告もあるが、Apple公表値と測定区間が異なるため、この差がそのまま「15分で50%」にも当てはまるとは言えない
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