Litmus — 話題のニュースを、深く読み解く。 RSS
ガジェット

「MusicCam Pro」が謳う水深8mの防水は、骨伝導イヤホンにもスマートグラスにもない水準

骨伝導イヤホン+カメラの新製品「MusicCam Pro」。組み合わせ自体は前モデル譲りだが、謳う防水性能はShokz・Ray-Ban Metaの代表機を大きく上回る。重量やバッテリーは非公開。

黒い耳掛け型イヤホンを2つ、白い背景の上でクローズアップした写真

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Swamy K on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

犬の散歩中、犬がふと振り返った一瞬を撮りたくて、スマホのロックを解除してカメラを起動する。その数秒の間に、犬はもう別の方を向いている。そんな経験がある人に向けた製品が2026年9月7日、Makuakeに登場した。骨伝導イヤホンにカメラを組み込んだ「MusicCam Pro」だ。答えを先に言うと、イヤホンとカメラを1つにする発想自体は、この製品が最初ではない。ただし謳われている防水性能の数値は、似た製品のどれとも水準が違う。

発表の骨子

RUIJIN (HONG KONG) TECHNOLOGY LIMITEDは、MusicCam Proの応援購入をMakuakeで受け付けている。PR TIMES Makuake

項目内容
支払い完了期限2026年10月30日
お届け予定2026年12月末
一般販売予定価格44,800円(税込)
カメラ約13MP静止画、2K/4K・30fps動画、視野角対角約80°
手ぶれ補正6軸補正
通信Bluetooth 6.0、Wi-Fi 6
音声骨伝導イヤホン、デュアルマイク+ENC
防水・防塵IP68、静水中8m・30分
その他AI機能(翻訳・対話)

応援購入の早期割引(超々早割28,224円など)はすでに終了しており、支援する場合は一般販売予定価格に近い金額になる。まだ発売済みの通常商品ではなく、支払い期限とお届け予定日が決まったクラウドファンディング中の商品だという点は、まず押さえておきたい。

イヤホンにカメラを載せる発想は、実は前モデルからある

「独自の融合」という説明だけを読むと目新しく見えるが、骨伝導イヤホンとカメラを一体化するというコンセプト自体は、MusicCam Proが初めてではない。同社は2025年に前モデル「MusicCam」をすでに発売している。前モデルの存在はギズモード・ジャパンの2025年10月の記事でも確認できる。Makuakeのプロジェクトページも、新モデルとの関係を「一体化したコンセプトはそのままに、カメラ性能、手ぶれ補正、防水性能、通信機能、AIアシストまで大幅にアップグレードしました」と説明している。Makuake

つまりMusicCam Proの新しさは「イヤホン+カメラ」という組み合わせそのものではない。では何が変わったのか。仕様表の中で一番数字が飛び抜けているのは、防水性能だ。

「防水」と一括りにしていたが、想定はかなり違う

自分は最初、IPX4もIP55も「防水」と聞いて似たようなものだと思っていた。ところが公式の説明を読むと、どちらも「濡れても壊れない」であって「水に沈めても平気」ではなかった。

カメラ付きウェアラブルの代表格であるMeta社の「Ray-Ban Meta」は、公式ヘルプページで防水等級をIPX4としている。そのうえで”Your glasses can’t resist submersion or extended exposure to water or other liquids.”(浸水や長時間の水への接触には対応しない)と明記している。Meta公式ヘルプ

骨伝導イヤホンの代表格であるShokz「OpenRun Pro」も同じ水準だ。防水等級はIP55で、「あらゆる方向からの噴流水(3.63mm)からの1〜3分間の耐水性」と説明するにとどまる。Shokz公式

どちらも、小雨や汗をかいても壊れない、という水準の話であって、水に沈めることは想定されていない。カメラを載せたウェアラブルでも、骨伝導イヤホンでも、事情は同じだった。

数値で比べると、MusicCam Proだけ水準が違う

MusicCam Pro Shokz OpenRun Pro Ray-Ban Meta

IP68 IP55 IPX4

8m・30分 浸水非対応 浸水非対応

0 2 4 6 8m

図は各社の公式発表(Makuakeプロジェクトページ、Shokz公式、Meta公式ヘルプ)にある等級・条件表記をそのまま長さと符号に落としたもので、第三者機関による実測値ではない。Shokz OpenRun ProとRay-Ban Metaは水深という概念自体を持たないため、棒ではなく×印にとどめてある。並べて見ると、MusicCam Proだけが軸の端まで伸びた長い棒になる。

MusicCam Proが謳う「水深8m・30分」の防水は、カメラ付きウェアラブルにも骨伝導イヤホンにもない水準になる。

ただし、ここで一度立ち止まりたい。「IP68」という等級の2桁目の「8」は、JIS C 0920やIEC 60529の規定上、1mを超える水深・時間の条件をメーカー自身が定めて試験する規格だ。アイアール技術者教育研究所 第三者機関が統一の水深基準を決めているわけではない。つまりMusicCam Proの「8m・30分」も、メーカー自身が申告した試験条件だ。外部機関がその数値を検証したという記載は、Makuakeページのどこにもない。同じ「IP68」でも、メーカーが定める水深次第で意味する防水性能は大きく変わる。試験は静止した水を想定しており、「水流や波浪などの影響を受ける場合は、水が侵入する可能性がある」とも説明されている。アイアール技術者教育研究所 泳ぎながらの使用まで保証する数値ではない。

同じ「防水」でも、MusicCam Proが謳う水深8mは、他の2製品が想定する「濡れても平気」な水準とは別次元の条件を、メーカー自身が設定した結果だと分かる。

発表されていないこと

仕様を読み進めると、カメラの画素数や通信規格は細かく書かれているのに、実際に耳にかけて使うときに一番気になる項目がどこにも見当たらない。

  • 本体の重量
  • バッテリー容量・連続使用時間
  • 内蔵ストレージ容量
  • 充電時間
  • AI機能(翻訳・対話)の対応言語数や具体的な精度
  • 防水試験を実施した機関・試験手順

カメラ・通信・防水という「数字で目立つ」項目は前面に出ている一方、装着する道具として毎日使えるかを左右する項目が抜けている。発表の力点の置き方がそこに透けて見える。

向く人・向かない人

  • 向く人: 散歩や旅行、子どもやペットの様子を、スマホを構えずに残したい人。骨伝導イヤホンで音楽や通知を聞きながら撮影したい人
  • 向かない人: 重量やバッテリー持ちを確認してから機器を選びたい人。クラウドファンディング特有のお届け遅延や仕様変更のリスクを避けたい人
  • 迷う人: 防水性能の高さだけで選びたい人。水深8mという数値がメーカー自身の申告値である以上、お届け後の実機レビューを待ったほうがいい

まとめ

  • MusicCam Pro(RUIJIN (HONG KONG) TECHNOLOGY LIMITED)は2026年12月末お届け予定、一般販売予定価格44,800円(税込)。骨伝導イヤホンにカメラを組み込んだウェアラブル機器
  • 骨伝導イヤホン+カメラという組み合わせ自体は、2025年発売の前モデル「MusicCam」からの継続で、この製品固有の発明ではない
  • 謳われている防水性能「IP68・水深8m・30分」は、カメラ付きウェアラブルの代表格Ray-Ban Meta(IPX4)にも、骨伝導イヤホンの代表格Shokz OpenRun Pro(IP55)にもない水準
  • ただしIP68の水深・時間はメーカー自身が定める試験条件で、第三者機関による検証の記載はない
  • 重量・バッテリー容量・ストレージ容量など、日常的に使う上で確認したい項目はまだ発表されていない。支援・購入は、これらとお届け後のレビューを踏まえて判断したほうがいい
購入候補

Amazonで条件を確認

記事で触れた判断基準から、候補を絞った検索結果を開きます。

価格と在庫は変わります。購入前にリンク先で、価格・販売元・仕様表示を確認してください。

コメント

気づきや感想をどうぞ

記事への補足や、読んで考えたことをお寄せください。個人情報や、他の人を傷つける内容の投稿はお控えください。

コメントを読み込んでいます…

    ほかの記事

    最新の記事 →