AIのモデルを手元で動かそうとして、メモリが足りないと止められる。部署にある大きなGPUは1台きりで、ほかの人の作業が終わるのを待っている。そういう場面に向けたGPUが、2026年9月14日にNVIDIAの製品ページに載った。「NVIDIA RTX PRO 5500 Blackwell Workstation Edition」だ。
このGPUは、ゲーム用の最上位「GeForce RTX 5090」と同じ数の計算コアに、2.6倍のメモリを載せている。そのうえ1枚を2つのGPUに分けて、別々の作業に割り当てられる。分けた1つの大きさはどれくらいで、どこに置いて使うカードなのか。順に見ていく。
RTX 5090と同じコア数に84GB
RTX PRO 5500は、手元のRTX 5090と何が違うのか。いちばん大きいのはメモリの量だ。
NVIDIAの製品ページによると、メモリはエラー訂正付きのGDDR7で84GB、最大消費電力は600Wになる。計算コアの数は、NVIDIAのボードを扱うPNYの製品ページに21,760基とある。RTX 5090の仕様も21,760基、メモリは32GBだ。
自分は型番の並びから、コア数もRTX PRO 5000と6000の中間あたりだと思っていた。仕様表に並んでいたのは、RTX 5090とまったく同じ数字だった。
同じ系列の中では、RTX PRO 5500は48GB(または72GB)のRTX PRO 5000と、96GBのRTX PRO 6000の間に入る。では、この84GBをどう使うカードなのか。
1枚を42GBのGPU2つに分ける
84GBを1枚に積んで何ができるのか。NVIDIAが製品ページで挙げているのが、1枚のカードを複数のGPUとして使う機能だ。
分けるとどう見えるか
仮の例で考える。同じ部署の2人が、1枚のカードを使いたい。1人は大きな言語モデルに質問を投げ続け、もう1人は画像を生成している。1枚のGPUを普通に使うと、メモリも計算も2人で取り合いになる。片方が重い処理を始めると、もう片方が遅くなる。
パソコンのディスクを区切って、ドライブを2つあるように見せる方法がある。同じことをGPUで行うのが、マルチインスタンスGPU(MIG)だ。NVIDIAの製品ページは、RTX PRO 5500で「最大 2 つの完全に分離されたインスタンス」を作れると説明している。英語版のページによれば、分けた1つずつに専用のメモリ、キャッシュ、計算コアが割り当てられ、処理の品質も保証される。
1枚のカードが、OSやアプリからは42GBのGPUが2枚ある状態に見える、ということだ。計算コアも2つで分け合うので、計算の速さはそれぞれに割り当てた分になる。
分けた1つは42GB
分けた1つずつは、どれくらいの大きさになるのか。PNYの製品ページは、MIGの構成を「最大2×42GBまたは1×84GB」と書いている。
同じ系列の分け方は、NVIDIAのMIGプロファイル一覧に載っている。RTX PRO 6000は24GBずつ4つ、RTX PRO 5000の48GB版は24GBずつ2つに分けられる。RTX 5090の製品ページにMIGの項目はなく、1枚を1つのGPUとして使う。
42GB。
分けた半分でも、RTX 5090を丸ごと1枚使うより10GB大きい。数字を並べて、自分はここで一番驚いた。1区画の大きさで比べると、RTX PRO 5500は系列の中でいちばん大きく区切れる。値はPNYの製品ページとNVIDIAのMIGプロファイル一覧による。32GBでは足りず42GBに収まるモデルなら、2人が1枚のカードで同時に動かせる。2人で分け合う前提なら、このカードはどこに置くことを想定しているのか。
ラックに集めて共有する設計
分けて使う前提のカードは、誰の机に置くのか。NVIDIAの答えは、机ではなくラックだ。
NVIDIAの製品ページは、RTX PRO 5500を「ラックマウント型ワークステーション」向けのGPUとしている。PNYはもう少し具体的で、ITが管理するラックにGPUを集め、ユーザーの間で共有し、需要に応じて増やす使い方を挙げている。サーバーのように1か所にまとめて置き、各自は自分の机からそのGPUを使う形になる。
冷やし方は2通り用意されている。
- 空冷: PNYによると高さ4.4インチ・長さ11.1インチの2スロット
- 水冷: RXMと呼ぶ形で選べる(NVIDIAの製品ページ)
MIGで1枚を2人に割り当て、そのカードをラックに何枚も並べる。このカードは、そこまでを1つの使い方として組み立てているように自分には見えた。では、自分の環境に向くのはどんな場合か。
向く人と買う前に見る仕様
RTX PRO 5500が向くのは、次のような人や組織だ。
- 32GBに収まらない大きなモデルを、手元の設備で動かしたい
- 1枚のGPUを、複数の人や作業に分けて割り当てたい
- GPUをラックにまとめて、IT部門が管理する体制がある
ゲーム用には向かない。NVIDIAの製品ページにある映像出力はDisplayPort 2.1bが最大4つで、HDMIはない。ゲームを遊ぶなら、HDMI端子を持つGeForceのほうが画面につなぎやすい。
買う前に確かめたい仕様は次のとおり。
- 電源: PNYによると最大600Wで、PCIe CEM5の16ピン端子1本から受ける
- 空冷か水冷か: 水冷はRXMの形になる
- 仕様の確定: NVIDIAの製品ページは現在の仕様を予備仕様としていて、変更される可能性がある
- 価格と発売日: 日本語ページの表示は「近日リリース予定」で、どちらもまだ案内されていない
まとめ
- RTX PRO 5500 Blackwell Workstation Editionは、RTX 5090と同じ21,760基の計算コアに、2.6倍の84GBのメモリを積む
- MIGで1枚を42GBずつ2つの独立したGPUに分けられ、分けた1つでもRTX 5090の32GBを上回る
- ラックにGPUを集めて複数の人で使う設計で、空冷の2スロット版と水冷のRXM版を選べる
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