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アイヌ語の挨拶、無料ブラウザゲームで今日から学べる

個人開発の無料ブラウザゲーム「アイヌ語しか使えない模様」は、消滅危機言語アイヌ語(沙流方言)の挨拶や会話表現を選択肢形式で学べる。財団公式の単語リストとの一致を確認した。

女性が開いた本を広げた机でスマートフォンの画面を見ながら学習している

イメージ写真 記事の内容を撮影したものではありません。Photo by Shantanu Kumar on Pexels

この記事には Amazon アソシエイトのリンクを含みます。

「アイヌ語は消滅危機言語」という言葉は聞いたことがあっても、実際にアイヌ語の単語を1つ言える人は少ない。学ぼうにも、何から手をつければいいのか分からない。

そんな人が今日から無料で試せるブラウザゲームを、AUTOMATONなど複数の媒体が2026年9月29日に報じた。個人開発の学習アドベンチャー『【悲報】転校生、アイヌ語しか使えない模様』は、選択肢をクリックして転校生と会話するゲームだ。会話を進めるだけで、アイヌ語(沙流方言)の挨拶や会話表現が身につく(AUTOMATON)。タイトルの調子はかなりふざけているが、中身はどこまで本物なのだろうか。

選択肢だけでアイヌ語が身につく

本作はPLiCyというフリーゲーム投稿サイトで無料公開されている、ダウンロード不要のブラウザゲームだ(PLiCy公式ページ)。スマートフォン・PCどちらのブラウザからも遊べ、課金要素はない。

遊び方はシンプルだ。

  1. 転校生「マシントッシュさん」との学校生活シーンで、選択肢からアイヌ語の表現を選ぶ
  2. 選んだ直後に、その言葉の意味や地域方言の違いについて解説が入る
  3. 正解すると好感度が上がり、好感度に応じてマルチエンディングへ分岐する

PLiCy公式ページの紹介文には、具体例として「ありがとう」にあたる「イヤイライケレ」、「◯◯してね」という依頼の言い回しにあたる「◯◯ヤン」が挙がっている。エクストラ画面の「補講」では、発音やアクセント、表記と方言の違いも扱っているという(GamePavilionjp)。ここまでは、よくある学習ゲームの仕組みに見える。気になるのは、なぜ数ある言語の中で「アイヌ語」が選ばれたのか、そして「沙流方言」という耳慣れない地域名だ。

なぜ「沙流方言」なのか

アイヌ語は、UNESCOが2009年の『世界の消滅危機言語地図』で「極めて深刻(Critically Endangered)」に分類した言語にあたる。これはユネスコの危機言語区分の中でも最も深刻な段階で、文化庁の資料でも日本国内の危機言語としてこの分類が確認できる(文化庁)。

アイヌ語には地域ごとの方言があり、本作が扱う「沙流」は北海道日高地方を流れる沙流川流域の呼び名だ。アイヌ文化の継承事業を担う公益財団法人アイヌ民族文化財団は、沙流のほか石狩川・十勝・静内・樺太など複数方言の単語リストを公式サイトで無料公開している。沙流方言には初級・中級のテキストも揃っている。本作がどの方言を扱うかは公式に説明されていないが、自分はこの教材の厚みが沙流を選んだ理由の一つだろうと見ている。

言語が置かれた状況は分かった。では、ふざけたタイトルのフリーゲームが、その言語をどこまで正確に扱えているのかが次の疑問になる。

ふざけたタイトルでも言葉は本物だった

PLiCy公式ページの下部には、参考文献の欄がある。中川裕『ニューエクスプレスプラスアイヌ語』(白水社)、萱野茂の辞典、そして先述のアイヌ民族文化財団の沙流方言単語リストが明記されている。ふざけた紹介文の下に、急に専門書の書名が並ぶ落差に、自分は最初「それらしい書名を並べているだけでは」と疑いながら財団のPDFを開いた。

結果は逆だった。紹介文にあった「イヤイライケレ」「◯◯ヤン」の2語は、財団公式の沙流方言単語リストの記載とそのまま一致していた。「イヤイライケレ」は同リストに「ありがとう」を表す語として、「ヤン」は「〜しなさい」を表す終助詞として、それぞれ掲載されている(アイヌ民族文化財団)。タイトルの見た目に反して、ゲームが教える言葉は、ユネスコが「極めて深刻」と位置づける消滅危機言語の、公式教材に基づいたものだった。

ただし、これはゲーム内の全表現を網羅的に照合した結果ではなく、紹介文にある2語を確認できたにとどまる。専門家による監修者名も公式ページには記載がない。

遊ぶ前に確認したいこと

  • 学べるのはアイヌ語の中でも沙流方言の、挨拶や簡単な会話表現にとどまる。他方言や高度な文法まで網羅する教材ではない
  • 個人開発のフリーゲームで、言語学的な監修者の記載はない。ただし参考文献に挙げられた書籍・財団教材そのものは実在する
  • スマートフォン・PCのブラウザで、無料・課金要素なしで全編プレイできる

まとめ

「アイヌ語は消滅危機言語」という知識だけを持っていた人にとって、この無料ブラウザゲームは実際の言葉に触れる最初の一歩になる。タイトルはふざけていても、紹介文にある言葉は財団公式の沙流方言単語リストと一致しており、出どころのはっきりした表現だ。学べる範囲は沙流方言の初級レベルにとどまるが、それでも今日、無料で、ブラウザを開くだけで始められる。

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